偽らざる気持ち
過去に何があろうとも目の前の敵を倒すのみである。あと一人このイグニート・ラングロスを倒せば、キーティア王女と結婚出来るのだ。
おおよそ結婚するまでに、これほどの酷な試練を与えられる人間も稀であろう。それでもミカツェルリア王子はハンロスド王国の為と言うよりは、自分自身の為に戦っていた。
やはり王族で弱いのか?とか、自分自身の人生を否定されるのは我慢がならなかった。相手が強いのは分かりきっている。最後の相手が誰であろうが、自分の名誉とプライドをかけて戦うまでである。助けてくれる人は誰もいない。
しかし、この経験はミカツェルリア王子にとっても成長のチャンスである。まぁ、負けて死ねば成長もくそもないのであるが…。今までは割りと好き勝手やり、苦労と言う苦労はしてこなかった。そう言う自分が、初めて苦難に直面して、それを一人で解決しなくてはならない。
どうして自分がこんな事をしなくてはいけないのかと嘆くよりも、先ずはやるべき事は与えられた試練をきちんと乗り越える事に尽きるのではないだろうか?
雑念は一撃を鈍らせる事になるであろうし、とにかく今はイグニート・ラングロスを倒す事に集中すべきである。あと一人までこぎつけたのである。もうゴールは目の届く距離まで迫って来ている。
その先の事に関して考えるのは今ではないはずであり、やるべき事をやると言うのが先決だろう。高まる興奮を抑えながら、ミカツェルリアはローレンディスと言う最終決戦までとっておいた切り札の剣を研いでいた。ローレンディスは、ミカツェルリア王子の父ロスドル国王が若い時に使っていた剣で、ハンロスド王国王家に伝わる宝剣である。
ローレンディスがミカツェルリア王子の元に届いたのはケルスミーロを倒してからの事であり、ミカツェルリア王子は対イグニート・ラングロス戦で使用しようと決意していた。
強いか弱いかはさしたる問題ではない。自分の力がどのくらいなのかは、仮にもこれから王位を譲り受けた時に、その地位に恥ずかしくない人間であるかを見極めると共に、キーティア王女と結婚するに値するか、自分のプライドの為に戦うと言うのがミカツェルリア王子の偽らざる気持ちであった。




