第6部・第8章ラスボス
いよいよ辿り着いた最後の試練。対戦相手の名前はまだ発表されていない。分かっている事は、相手がゴードン王国騎士団最強の兵士であると言う事だけ。
ラスボスとも言える人間との戦いを前に、ミカツェルリア王子は冷静であった。既に三連戦をこなし、体力的なスペアは存在しない。こういう不利な状況で戦いを強いられたと言う経験はミカツェルリア王子の記憶には無い。
世間の人間から見れば、ミカツェルリア王子はきっと温室育ちの高級フルーツ程度の認識しかないであろうと。そう言う弱い軟弱なイメージを改善するには持って来いの戦いでもあった。政治的な意図はミカツェルリア王子達には誰にも無かった。
ただ愛するキーティア王女の為に剣を振るっているに過ぎない。ゴードン王国の国民もゴードゥロア国王も、この国の誰一人としてミカツェルリア王子がここまでやるとは思っていなかっただろう。
キーティア王女が田舎国家ハンロスド王国の王子と結婚するかも知れない。それが現実味を帯びて来た事によって、尚一層のシュプレヒコールとラスボスに対しての期待が爆発した。対戦相手を待つミカツェルリア王子の前に下級兵士が現れ、突然24時間の休息が与えられる事になった。神がミカツェルリア王子に味方したのかもしれない、とそう思ったりもした。
どうやら、ラスボスが手負いではなく万全の状態でのミカツェルリア王子を倒したいと進言したと言う。手負いのミカツェルリア王子に万が一敗れる様な事になれば、ゴードン王国騎士団の信頼は地に落ちる。
24時間あればある程度の体力は回復する。ラスボスからの粋なはからいに、会場中の観客もウェルガーもサンゴストも、ホッとした。しかし、24時間後にはこのゴードン王国立闘技場で決着をつけることになった。
相手の情報が全く入って来ない中、闘技場から引き上げる際にようやくラスボスの正体が判明した。その名はイグニート・ラングロス。ゴードン王国騎士団隊長で、ゴードン王国騎士団最強の手練れである。それを聞いたサンゴストは飛び上がりミカツェルリア王子にこう告げた。
「王子!コヤツは強いですぞ!」
サンゴストはイグニート・ラングロスについて、何か知っていた様であった…。




