閃光の様に
くだらん会話は終わりだと言わんばかりにミカツェルリア王子は一撃を繰り出した。ポルテインシールドで敵の攻撃をガードしながら戦うと言うシンプルなスタイルは相変わらずだ。
俺には父親譲りの真面目さと一本気な所がある。そんなことは、自分で言う事ではないのかもしれない。それでもこのバリテングブレードを振るっている間はハンロスド王国の戦士であり、代表でもある。
相手も負けられない理由があるのかもしれないが、自分もそれと同等かそれ以上に負けられないものを背負っている。その様な気持ちが、今のミカツェルリア王子からは感じられる。
ケルスミーロには悪いがこんなところでつまづく訳にはいかないのである。槍と剣のぶつかり合う無機質な金属音だけが、観衆の見守るゴードン王国立闘技場に響き渡る。
ケルスミーロにもゴードン王国騎士団No.2のプライドがある。田舎国家の青二才貴族の坊っちゃんには負けられないぞと言う気迫は充分に伝わって来る。両者の全力投球は見ている者に伝染して、観衆を黙らせた。
完全に闘技場内はミカツェルリア王子とケルスミーロの気迫のオーラに包まれた。その時、大きな金属音が鳴り折れた刃が闘技場の床にカランと音をたてて落ちた。ケルスミーロのフィールディストラが折れた音だった。
武器を失った相手にミカツェルリア王子は容赦なくとどめの一撃を繰り出した。振りだしたバリテングブレードはケルスミーロの心臓を一気に、閃光の様に貫いた。ここにケルスミーロは散った。
「勝者ミカツェルリア王子!」
の大きなコールが闘技場に響き渡ると、大きな歓声が沸き起こった。戦う前は8:2位の声援で圧倒的にケルスミーロ派が主流だったが今は違う。5:5位まで声援を盛り返した。間違いなくミカツェルリア王子の評判は上がっていた。その様子を見ていたある男はこうつぶやいた。
「前座にしてはまぁまぁ、よくやった方だ。」
と。何とこれだけの死闘がまだ前座なのかと、それを聞いていたウェルガーやサンゴストはとても驚いた。




