ハンロスド王家の血筋
ミカツェルリア王子にも負けられない理由はある。ハンロスド王国の王子は自分ただ一人である。一人っ子の自分が殺られてしまえば、ハンロスド王国200年の王家の血筋が途絶えてしまう事になってしまう。
負けられない理由はそれだけではない。キーティア王女に惚れてここまでの責任を感じているのだ。だから、どんな強敵が現れようと、それを退けられなければキーティア王女に対しても、敗れ命果てた者に対しても、言い訳出来ないのである。
元来、ミカツェルリア王子はそこまで自分の力を過信してきた訳ではない。ほとんど実戦経験はなく、本当にただのハンロスド国王の息子と言うだけであった。ミカツェルリア王子にはそれがどうしても我慢が出来なかった。
どうせ、エリートの道を約束された温室で育ったかぼちゃの王子様なんだよと。そうでは無い事を世間の人間に認めて貰いたかった。名のある国の猛者をも退ける力が、自分にも有るんだぞと。
正直な話、王子の実力を危惧していたのは他でもないサンゴストである。ミカツェルリア王子を生まれた時から知る、世界で一番ミカツェルリア王子に接してきた人間が言うのであるとしたら、それは間違いない事である。戦いの内に成長するのはまだ想定内。しかし、明らかに実力に差のある者に接し叩かれてしまえば、何も残らない。
本当にここから先の戦いで、ミカツェルリア王子がどこまで戦えるかは、誰にもわからず未知数であった。サンゴストはハンロスド王国にいるロスドル国王に定期的に文書による通信連絡をしていて、ロスドル国王陛下もミカツェルリア王子の戦いについて心配していた。勿論、ミカツェルリア王子に勝って欲しいのは山々だが、小手先ごまかしが通用するレベルの相手ではない。そう言う事も含めて、ミカツェルリア王子にとっては難しい相手を迎え撃とうとしていたのである。




