敬意の表れ
変われるものならばウェルガーはミカツェルリア王子と変わって差し上げたいとも思った。小さな頃から実の兄弟の様に過ごして来た二人。待っているのは嫁を手に入れられないと言うだけではなく、死が待っている。生きるか死ぬかの戦いをあと三戦も残しているのは、正直キツいと思う。ミカツェルリア王子の立場ならきっとウェルガーは正気の沙汰ではいられないだろう。
その想いは老兵サンゴストも同じである。しかし、ここは二人とも心を鬼とした。ここで手を貸してもその勝利をミカツェルリア王子が喜ばないだけではなく、王子の名誉にも関わる事だからである。ここは黙って見届ける以外に方法は無いのである。
しかし、ここでサンゴストには疑問が生じたのである。こんなに手練れをぶつけてくると言う事で、もし仮に全員がミカツェルリア王子に倒された時の国家防衛よりも、キーティア王女の方がゴードゥロア国王は大事なのだろうか?いや、その影響力はそんなちんけなものではない。
ハンロスド王国の王子が命をかけて嫁を全力で手に入れようとしているのである。きっとこれは、そういう事に対するゴードゥロア国王なりの誠意の表し方なのだろう。失礼があってはならない。例えハンロスド王国が田舎の小国であったとしても、である。
とは言え、サンゴストが考慮する様にゴードン王国騎士団のトップ3の騎士達を流出するかもしれないと言う問題は、ゴードン王国騎士団にとっても死活問題であった。その後任人事はさておき、ゴードン王国騎士団の力を示す為にもミカツェルリア王子には負けられない。そういう国家の思惑にも左右される大事になっていた。
ミカツェルリア王子は、とんでもない挑戦に手をつけたと今更ながら思った。だが、寧ろこのくらいの事(試練)はあって当たり前だ。と言う様な考え方でいられるあたりは、流石は一国の王子である。幼い頃から鍛えられたその剣技とビックマウスは決してはったりでも見せかけでもなかった。




