ケルスミーロ騎士団副長
「王子、やりましたな!」
喜ぶウェルガーの瞳は曇っていない。
「まぁ、まだ安心するのは早いだろ?」
サンゴストは老兵らしく冷静であった。
「結構手強かったぞ?あの500人斬りのムラティモス。」
「でも500人斬りってマジなのかな?」
「まぁ、嘘にしても本当にしても闘技場のレベルなんて所詮あんなもんすよ。」
ミカツェルリア王子は控え室に戻った。するとゴードゥロア25世に呼び出された。
「先ずは第一の試練突破おめでとう。キーティアも喜んでいたぞ。さて、次なる試練からは雑魚の相手はさせない。ゴードン王国第2騎兵団長ケルスミーロがそなたの第2の試練の相手だ。ゴードン王国にとってはケルスミーロの存在感は小さくはないが、まぁここからはワシも本気の人材をミカツェルリア王子にぶつける。決闘は5日後。私からは以上だ。」
そう言うとゴードゥロア25世は引き上げて行った。
「おいおい。あのムラティモスが雑魚レベルってマジかよ。」
ミカツェルリア王子は即座に第2の試練の存在をウェルガーやサンゴストに伝えた。すると二人ともかなりネガティブな回答を返してきた。
「王子?ケルスミーロ騎士団副長と言えばゴードン王国の中でもかなりの強敵ですぞ。」
「まぁ、勝率1割ってとこっすよ。」
そう言うネガティブな回答を返してきた裏をとるため、ケルスミーロ騎士団副長についてミカツェルリア王子自ら調べてみた。するとウェルガーやサンゴストの言っていることは嘘ではない事が分かった。
ゴードン王国は騎兵国家でもある。第1から第60まで騎兵旅団を持っているのだが、その中でも第1から第3旅団はエリート中のエリート。その副旅団長ケルスミーロが相手なのだ。ゴードン王国陸軍の実質No.3との勝負にミカツェルリア王子は当てられた。
ムラティモスとの戦いを見たゴードゥロア25世が危機感を感じていたのは確かで、このままではキーティア王女をハンロスド王国に持って行かれてしまう。それは父としての自然拒否反応の様なものであった。ここでケルスミーロ騎士団副長を用いる事に対して、ゴードゥロア25世はかなりの抵抗感があったのは確かだ。
それでも、ミカツェルリア王子の勢いを止める為には、ケルスミーロ騎士団副長をあてるしかないのだとゴードゥロア25世は思っていた。とは言え相手はハンロスド王国の看板を背負っている。下手な手はいずれにせよ、打てない。まさか嫁探しで真剣勝負する事になろうとは、微塵も思っていなかったミカツェルリア王子一行ではあった。




