青龍の心中
気持ちが冷める事は当然あるだろう。カップルが別れを決意する理由の大半は、男女の不仲によるものである事がほとんどである。もう昔の様に好きではなくなってしまった。たったそれだけの事で別れを決意するのが、男と女なのだ。
青龍と水菜美の様に若いカップルに限らず、気持ちが冷めてしまえば、いくつになっても別れたりする。要するに、経験のあるなしに関わらず別れる時は別れるし、続く時は続くそれが男女の宿命であると言える。案外簡単な所に答えはあるのかもしれないが、その答えを出した所で、別れてしまうカップルが存在するのは、理屈や理論・原則を超越したどうにもならない事の証明でもある。青龍はその事を国公立大学二次試験を終え、結果待ちの親友奥野永作に相談した。
「どうした青龍?そんなしけた面して?」
「いや、実は水菜美と別れる事になって…。」
「何?またか?卒業控えて別れるとは…。」
「別れるの何回目?」
「2回目…。」
「いやね。重要なのは回数じゃなくて理由なのは理解しているんだけどさ。」
「今の青龍がそんな事言ったって強がりにしか聞こえないぞ?」
「正直な話、どうしたら良いか分からなくなったよ。」
「回数の問題じゃないとか強がってた割には随分弱気な発言じゃないか?」
「生きる指針の様なものだったんだ。水菜美はさ…。」
「だったらもう一度ヨリを戻せるように頑張るしかないだろ?」
「頑張るって簡単に言うなよな。今の俺には辛い言葉だ。」
「あのな?センチメンタルな言葉を期待する方が馬鹿だぞ?」
「気の利いた言葉を期待しちゃいないけどさ。昔からそう言う事言うの苦手だもんな。」
「恋愛経験なら青龍が上手なんだ。そこを活かせ。」
「経験?」
「そうだ。経験のある奴が必ず勝つ!野球部時代もそうやって、経験活かしてやって来たじゃねーか?」
「大した結果は残せていないけどな?」
「大事なのはプロセスだ。結果は大した事はなくても3年間汗水流したと言う経験は絶対人生の糧になる。」
「随分熱く語るじゃねーか?奥野らしくないぜ?」
「経験は人を裏切らないんだ。とにもかくにも未練あるんだろ?」
「あぁ。未練タラタラのみたらし団子だよ。こんちくしょー!」
「だったら最高のお茶を用意しなくちゃな?」
「よく分かんないけど、言いたい事のニュアンスは伝わった。」
とは言え、青龍の心の中はそれなりに傷ついていて、ナイーブになっていたのは確かであった。奥野は、そんな青龍にカツを入れたのだ。




