ヒッポリナとの別れ
二人きりで女性とデートをする事など、ミカツェルリア王子にとっては人生で初めての事であった。緊張はしていなかったものの、やはりいつもの強気なミカツェルリア王子はそこにはいなかった。
アーリディンテス二世の王前、形だけ体裁を整えるつもりで、ヒッポリナとデートをしたが、話を聞けば聞くほどにヒッポリナは生まれも育ちも才女である事が分かった。ただ、一つミカツェルリア王子には気になっている事があった。
「どうして、このお見合いに参加したのですか?」
するとヒッポリナはこう答えた。
「彼氏にフラれたばかりなんです。ハンロスド王国の王子様なら私に不足はない、なんてお高くとまっていました。でもまさか最後の一人に残るなんて思ってもみなくて。ごめんなさい。」
「謝る必要はありませんよ。ヒッポリナさんには持って生まれた可愛さと能力があるのですから。」
「どうして、この私を最後の一人に?」
「リドスラガ王国の全面協力で開催したお見合いの手前、様々な方面の方の顔に泥を塗る事は出来なかったのですよ。そんな理由で貴女を選んだ事を後悔しています。」
するとそれを聞いたヒッポリナは笑ってこう言った。
「お互い様じゃないですか?結構私達相性良いのかも(笑)」
「違った形で出会えていたらと悔やまれます。」
特にデートの中身は決められておらず、食事をして買い物をして、二人だけの時間を満喫した。と、同時に二人は結ばれないと言う事を確信してしまった。それはお互いを嫌いだったからとかフィーリングが合わなかったと言う理由でもない。お見合いではなく違った形で出会えていれば結果は違ったのであろう。
ヒッポリナにとって、ミカツェルリア王子は一人の男性として、魅力的な存在だったが、ミカツェルリア王子の妻になる覚悟が出来ていなかった。この見合いに参加した理由が彼氏へのあてつけでなければ、ミカツェルリア王子はヒッポリナを妻にしていたかも知れない。
そもそもミカツェルリア王子には分からない事があった。何故自分は、こんなに強制的に結婚を急かされているのかを。ミカツェルリア王子はヒッポリナにこう言って別れを告げた。
「貴女は僕の様な男性にはもったいない女性です。」
「ミカツェルリア王子も幸せになって下さいね?」
「お互いに。」
それはミカツェルリア王子なりの別れを意味する精一杯の回答であった。




