第1部・第4章2度目の別れ
すれ違うのは男女の宿命なのか?青龍と水菜美は2度目の別れを経験する事になった。原因は正直なところよく分からない。そこを深く追求する事もしない。そんな事をしたからと言ってやり直せる保障などどこにもない。今は気持ちを整理するだけで精一杯であった。
とは言えどんなに強がっても、やはり好きな人との別れは辛い。直ぐに別の異性に鞍替えする不安を抱えたまま、ありもしない想像をする事には不自由していなかった。
自分と思っている方向が違うと言うただそれだけの事で、ありながらズレた二人の道を修正するのは容易ではない。思い切ってスパっと関係を断つ方がスッキリするという事も充分有り得る。
ただ卒業までもう日数が無い。こんなギクシャクしたまま離れ離れになる事はしたくなかったが、そうなるのもやむを得ない状況ではある。バレンタインに湧く男女を尻目に青龍と水菜美はたもとを分かつ方針を固めた。それは周囲が何と言おうとも、恋愛をしている本人達が別れた方が良いと判断したから、そうしたのまでなのであって、付き合い続けた方が良いと少しでも思っているなら、別れたりはしなかっただろう。
それは充分に考察を重ねた上での判断であり、お互いに納得するものであった。別れるとは、そう言うものでなければ、必要充分条件を満たせずしこりが残ってしまう。別れる時は勿論、付き合い始める時も、互いにしこりが残ってしまわない様に配慮する必要はある。ただ人間はAIや機械ではない。パッパッと画面を切り替えられない。どんなに配慮しても必ず大小のしこりは残るのが恋愛の性である。
たかが高校生の恋愛と思うなかれ。基本的な恋愛の構造は成人した大人と同じである。高校生としての卒業を目前にして、今後水菜美に対してどう接すれば良いのか、どう言う男でありたいのか、それを青龍は考えなければならなかった。そしてそこにあるべきパートナーが、誰なのかをはっきり明確にしておく必要があったのは、間違いない。まだ18歳。とは言え法律上は成人である。そんな若者に、未来の明確なビジョンを持てと言う方が酷なのかもしれないが、ビジョンがあるのと無いのでは、その後の道が全く違うものになるのは間違いない。
どんなに離れていても、繋がり合うべき人間と言うものと巡り合う事になっている。それが運命と言うものであり、定められたものなのである。




