自由恋愛の喜び
旅の日程はミカツェルリア王子が25歳になるまでの期間が期限と言う事になった。もし仮にこの期間内に意中の人物が決まらない場合には、ロスドル国王の推薦する人物とお見合い結婚を強制させられる事になってしまう。
なまじ4年と言う期間が与えられた事により、もしミカツェルリア王子が結婚相手を見つけられなくても、お見合いにスムーズに持って行く為の期間設定だなと、サンゴストは思っていた。
しかし、ハンロスド王国の長い歴史の中で、この様に次世代の君主である王子に自由恋愛を一定期間ではあるものの、門戸を広げた事自体が画期的な事であるし、王家にとっては民衆がが革命を起こすのと同じ衝撃があった。
3年も4年もあれば意中の人間くらい見つかるだろうと思うかもしれないが、ミカツェルリア王子の理想は高く、お眼鏡にかなう人物は確かにそう多くはない。
王家の人間は皆整った顔立ちをしているし、周囲の女性は皆美人である。だが、何よりウェルガーやサンゴストが危惧していたのがミカツェルリア王子がとても気難しい人間であると言う事である。これにはロスドル国王も頭を悩ませていたし、サンゴストも理解していた。
出発まで一月を切ると、ミカツェルリア王子がそわそわし始めた。それはそうである。ミカツェルリア王子にとって旅に出ると言う事は、退屈な王宮での生活から抜け出せると言う事である。それが何よりも嬉しかった。
そんなミカツェルリア王子が旅を前にして落ち着いていられるはずかない事は、サンゴストには分かりきっていた。これは想定内の事である為、特段驚く事でも無かった訳であるが、それに付き合わされる、ウェルガーやサンゴストは大変であった。ミカツェルリア王子は幼少の頃から付き添いの兵士を困らせる事は、有名であり今もその悪い癖は変わってはいなかった。




