互いの想い
「そうなの?貴方野球部のキャプテンだったんだ?へぇ。」
「俺は仙木さんの事を知っていたよ。男子の間では有名だったから。」
「え?私って男子からそういうふうに見られていたの?」
「運動部と文化部じゃそんなに交流はないからね。」
「一学年に300人の男女学生がいるのよ?その中で有名なのは良い事なのかな?」
「さぁね。美人で頭が良ければ話題になるでしょ?」
「謙遜する訳じゃないけどあすなろ高校は私にとってはランク下だから。」
「公立や私立の上位高校よりも競争無くて楽だもんね?」
「そうね。でもあすなろ高校の事を馬鹿にしている訳じゃないのよ?」
「結局どの高校に行ったとしても、しっかりやるかやらないかだとは思うけど。」
「そうだね。私はあすなろ高校で1位を取り続けてきたけど、確たる目標は無かったのよ。」
「落第しない程度の勉強しかしてこなかった俺とはレベル違いだね。」
「これから頑張ればもっと良くなるんじゃない?」
「あんまり興味ないんだよね。進学は。」
「じゃあ就職するの?」
「いや、それも未定なんだよね。」
「とにかく今はガムシャラに勉強している。早く進路は決めたいんだけどね。」
「私で良ければいつでも相談にのるよ?」
とまぁ、二人は昼休みが終わっても話を止めなかった。不思議と話していて悪い気はしなかった。その気持ちが恋である事に気付くのは、時間の問題であったし、何よりも同じ学校に通っている事が二人の距離を縮めたのである。
置かれている状況は全く違うけれど、お互いが持っていなかったものをお互いが持っていた為に、好きと言った感情が涌き出てくるのは、異常な感覚ではない。寧ろそうした感情を抑えている方が、不健全である。
学力があるないと言う事や、スポーツやその他の分野で成績を残しているいないに関わらず、恋愛は可能だろう。多少の影響はあっても、恋愛と言う純粋な気持ちには勝てない。社会的地位や能力により、その人間の恋愛対象が狭くなってしまうとしたら、人類はここまで文明を進める事は出来なかったであろう。
何はともあれ、水菜美の青龍に対する想いも、青龍の水菜美に対する想いも、日に日に増していたのに違いはない。




