昭和の女
結婚式を終えたその夜の久五郎と雅代の会話である。
「あーあ疲れた。結婚式ってこんなに疲れるものなんだね。」
「一生にそう何度もあるものじゃないからね。私は楽しかったよ?」
「確かに御馳走ばかりでもうお腹一杯。夕食はいらないね。」
「これで私は池倉雅代になったのね。」
「私、結婚ってもっとリアルなものだと思っていたけどそうじゃなかったわ。」
「女性にとっちゃいつまでもメルヘンチックなものかもね、」
「やっばり結婚前と後では生活がガラッと変わるのね?」
「そうかな?だとしたら大人の階段登ったんじゃないかな?」
「私達の様な凡人でも激変するんだから。」
「凡人には凡人なりの生き方があるんだよ。」
「どうして私はQちゃんと結婚しようと思ったか分かる?」
「何だろう?性格?タイプ的な問題とか?」
「はっきり言えば、相性かな。ルックスとかじゃない。」
「けなしているんだか誉めてるんだか分からないけど。」
「結婚するために必要なのは、ルックスだけじゃないって事。」
「それが真実なら世の中のモテない連中には良い知らせだな。」
「まがりなりにも長期間付き合ってからのゴールインだからね。」
「結婚したと言う実感がないのはそのせいか?」
「でも、そう言う付き合うのと結婚は別の事だから。」
「とにかく、これからは夫婦なんだ。よろしく頼むよ。」
「はい。料理も覚えなきゃね。家事は分担制で。」
「雅代料理下手くそだもんな。俺が作るよ。」
「これから特訓して絶対唸らせてやるんだから。」
「仕事との両立大丈夫?無理しなくて良いからね?」
「女性なら料理も覚えなきゃ駄目でしょ?」
「案外考え方古いよね雅代は。昭和つーかなんつーか。」
「不器用だけど本気出したら凄いんだから。」
「自分で言うかよ。まぁ、そう言う所嫌いじゃねーけど。」
「Q ちゃんの好きな料理位頭の中にある。」
「期待はしないけど、まぁやるだけやってみなよ。」
「料理だけじゃない、手を動かさなきゃ。」
「まぁ、毎日外食とか惣菜に頼る訳には行かないからな。」
「任せてよ!すぐ上達する様になるんだから。」




