江戸での再軍備完了
西へ進撃する為には装備も充実させる必要があった。そこで勝はオランダから最新鋭のスナイデル銃500丁と、ヘンリー・マルチニー銃500丁を輸入し、精鋭部隊を結成。回転式連射のガトリング砲10門と、元込み式大砲で当時最強を誇ったアームストロング砲10門も輸入した。これらの大砲は英国から輸入したものであるが、アームストロング砲は英国人ウィリアム・アームストロングがクリミア戦争(1853年~1856年)の際に開発されたもので、英国陸軍の正式砲に採用された代物である。
兵力の差はあったが、旧幕府軍勢力が敗退を重ねていたのは銃の性能にあった事は、意外と知られていない。勝が臨時でかき集めたこれらの兵器だけでは勿論足りないが、旧幕府軍にとっては大きな買い物であった。陸上で戦いを展開している間に、勝が中心となって編成した旧幕府艦隊をもってすれば、遂に薩摩長州を中心とした新政府軍を倒せるか?と言う道筋は見え始めていた。その資金も勝が幕臣時代に貯めた私財をかき集めてやりくりしていた。
刀の時代は終わったとは、よく言ったものであるが、旧幕府軍勢力の最大の売りは白兵戦において、圧倒出来る剣士が数多く残っていた事である。勿論、新政府軍にも手練れはいるが、新政府軍兵士のほとんどは徴兵されかき集めた素人である。戦闘のプロフェッショナルが最新鋭の兵器で武装した素人と戦火を交えていたと言っても良い。ムシャカマルが快進撃を続けられたのは、そうした背景があった。
江戸での再軍備もいよいよ終わり、まずは京の都を抑える為、旧幕府軍勢力は西へ進撃し始めた。旧幕府軍勢力は約25万人まで膨らんでいた。単純な兵力では新政府軍を上回っていた。先陣が出発する時、珍しくムシャカマルが訓示を述べていた。
「さて、江戸はを取り返したは良いが、京の都つまり陛下の居られる上様のお膝元は新政府軍が占拠している。先ず薩摩・長州に進軍する前に西の拠点となる京都を抑える事は必須である事と思う。まだ道半ばではあるが、もう少しこのムシャカマルについて来て欲しい。その上で全ての戦いが終わった時には新たな日本の基礎を築いて欲しい。その為には諸君の力が必要不可欠なのである。さぁ、ここからが本当の勝負所だ!」
ムシャカマルは口達者でも何でもなかったが、人を動かせる技術はピカイチ優れていた。




