遅まきの青春
次の日。青龍は放課後の教室で水菜美を待っていた。予備校や自宅に直行する生徒がほとんどの為、放課後の3年生の教室にはほとんど人がいなかった。そこへ別のクラスの水菜美が現れた。
「お待たせ。待った?」
「いや、そうでもない。」
「まわりくどいのは嫌いだから言うけど、やっぱり私やり直したい!」
「その事については異存はないよ。でも二度目はなしだぜ?」
「分かってる。でもやっぱり私には青龍が必要なの。」
「俺にだって水菜美は必要さ。かけがいのない存在って奴だね。」
「私、来春から東京に行く事になるけど、それでも良い?」
「ここは神奈川県だぜ?遠距離って程じゃないだろ?」
「それもそうだね。休みができたら遊びに来て良いからね。」
「仕事の進捗次第かな。板につくまでは厳しそうだけど?」
「そっか。青龍は造船会社に就職するんだもんね?」
「今更何言ってんだよ(笑)?水菜美の方こそ遊んでばかりはいられないだろ?」
「そうだね。でも社会人1年生よりは格段に楽でしょ?」
「1年位は様子見だな。とりあえず今の所は。」
「長いね?」
「無理して会っても互いの為にならないからさ。それに水菜美はやっぱり、大切な…存在だからさ。」
「じゃあ卒業まであと少ししかないけど、一杯思い出作らなくちゃな。」
「そうだな。遅まきの青春と言う奴だな。」
「うん。」
「青龍さ、車の免許取ったんでしょ?京子から聞いたよ?」
「ドライブデートか…。でも俺車無いしな。」
「レンタカーでも何でも良いじゃん。」
「ナイスアイデア!」
「安全運転だけど、それでも良いかい?」
「全然OK。」
「大した金も無いけどドライブ位なら良いかもね!」
「無理に車を使う必要は無いんだぞ?」
「でも車があれば行動範囲が広がるじゃない?」
「そりゃあ、そうなんだけどさ、ぶっちゃけ運転下手くそなんだよね?」
「乗らなきゃ上手くならないわよ?食わず嫌いは駄目。」
「何か尻に敷かれるこの感じが凄く懐かしいね。」
「私は嫌いじゃないわよ?」
「いや、そう言う事じゃなくて。敵わないな水菜美には。頭が良いんだよな。」
「何?その敗北宣言(笑)。じゃあ私が行く所決めちゃうからね?」
「もう御好きな様にやっちゃって下さい。」
二人はようやく一つに戻れたような気がしていた。




