最悪の出会い
「水菜美、あんたは予備校なんて来る必要無いんじゃない?」
そう水菜美に言うのは、親友の川合京子である。
「念の為よ。」
そう言う水菜美には、余裕が感じられた。県立あすなろ高校入学以来一度もトップの座を明け渡す事の無い彼女にとっては、予備校など不要のモノであり、受験の雰囲気を味わう為のツールにしか過ぎなかったのである。
優秀なのに進学意欲が無く、毎日勉強を普通にしていただけで、一位を目指した事は一度も無い。美術部の主将になったのだって、自分から立候補した訳ではない。じゃんけんで不運にも負け残りをしたからだ。
そんな欲の無い、自分から進んで何かをしたいと思った事の無い少女であった。成績優秀な水菜美は、教師からの評判も良く、また可愛らしいルックスから、文化系女子でもモテると言う事を証明していた。そんな水菜美は、同性からも注目される存在であった。
当然青龍も水菜美の事は知っている。そんな二人が出会ったのは、青龍が予備校に通い始めた8月下旬の昼休みの事であった。青龍は毎日予備校に来ていたが、昼休みだけは一人になりたくて、近くの公園で過ごしていた。あまり人通りのないその公園は、部活を引退して煙草を吸うようになっていた青龍にとっては、最高の場所であった。
当然見つかればヤバイ。法律にも20歳以下の喫煙は禁じられている。とは言え青龍は煙草を吸うと落ち着き勉強に集中出来た。昼休みの一服は中でも格別であった。
その日も青龍は昼休みに煙草を吸っていた。すると後ろから聞き慣れない声がして慌てた。
「貴方、あすなろ高校の生徒でしょ?駄目じゃない煙草なんて吸っちゃ?」
青龍はその声の主が仙木水菜美だと理解するのに1分と時間を必要としていなかった。
「他の奴等には言うなよ?って言うか何でここに?」
「私がここにいちゃいけない理由はないと思うけど?」
青龍が水菜美を論破するのは無理があった。そして何より、いけない事をして見つかったと言う後ろめたさが、青龍を消極的にさせた。
「貴方、名前は?」
「君井青龍。あんたの名前は?」
「私は仙木水菜美。よろしくね。」
「ああ。よろしく。」
とんでもない出会い方をしてしまったと、言うか出会い方としては最悪であった。とは言え、こうして二人は出会ったのであった。