第4部・第4章勝さん
決して新政府軍の捕虜になっていた訳ではないが、やはり江戸(東京)には重要な人物が沢山存在した。その中でもムシャカマル等旧幕府軍勢力にとって影響力があり、飛び抜けて重要な人物だったのが、勝さんこと幕臣勝海舟である。新政府軍の元で海軍建設に力を注いでいた旧幕臣をムシャカマルは旧幕府軍勢力の弱点である、水上戦力の向上に手を貸して貰おうと考えていた。
ただ、勝は今頃になって南下してきた旧幕府軍勢力に冷ややかな視線を送っていた。そもそも誰よりも旧幕府軍勢力の実力を知る勝海舟にとって旧幕府軍勢力の南下は信じがたい事の連続であった。それを説得する所から入らなければならなかった。勿論、この仕事は幕臣である土方と榎本の仕事であった。その一方でムシャカマルは一度戦力の把握に没頭する事になる。膨れ上がった旧幕府軍勢力は、約25万人程。領地を回復した副産物であった。
「勝先生!お怪我はありませんでしたか?江戸は奪還しましたよ!」
「榎本!生きておったか。しかしこれは一体どういう事だ?」
「ムシャカマルと言う軍師&剣豪が手助けしてくれたのであります。」
「新選組の土方か?これはまた驚いたなぁ…。」
「あれよあれよとムシャカマルの指示で動いていたらこの有り様ですよ。凄いでしょ?」
「旧幕府軍勢力の装備でよく対抗出来たものだな。」
「敵の武器を奪いながら歩を進めたんですよ。」
「でも江戸を奪還するとは、そのムシャカマルと言う剣豪は只者ではないな。」
「それは現場も感じています。あれほど綺麗に勝てるとは思っていませんでした。」
「して?ムシャカマルとやらに会いたいのだが?」
「今は増幅した兵力の整備にあたっています。終わり次第向かわせます。」
「取り込み中なら、無理に呼びつけなくてもよい。」
「ムシャカマルは稀代の名剣士であり軍師です。勝さんにも是非一度お目通りが叶うと良い人物です。」
「旧幕府軍勢力が首の皮一枚と言うタイミングての登場まさしく奇跡。」
「それはもう圧巻の剣技。その知略も右に出る者はおりません。」
「で?このワシに何をしろと?」
「勝さんの力が必要なんです。幕府軍艦奉行の勝海舟の力が。」
「完成間近の海軍は新政府軍の為に作ったが、雇い主が敗走した今、旧幕府軍勢力に使わせても良いだろう。」
「ありがとうございます。鬼に金棒ですね!」
「油断はするなよ?本当の戦いはここからだ。」
勝海舟を説得した土方と榎本は、半信半疑な勝にムシャカマルの実力を見て貰う他無い。と思った。だが、ムシャカマルは旧幕府軍勢力の総大将である勝海舟に会いたくなかった。勝海舟にその実力を見せるのが恥ずかしかったからである。




