第4部・第3章江戸奪還
土方・榎本は仙台以北を手中に治めてからは、慎重に江戸付近まで進軍した。これはムシャカマルの指示によるものであった。兵力の量も質も新政府軍よりも旧幕府勢力が劣っている事に変わりはないからだ。たった二度三度小規模な勝利を治めているからと言って、油断する理由には成り得ない。
ただ、着実に南へ南へと歩みを進めて勢力を拡大しよう。それが土方・榎本・ムシャカマルの三者の一致した見解であった。だが、ただ南下しても芸がないと言う事で、戦利品として得たスナイドル銃やアームストロング砲等の最新式装備を、見つけては奪い自分達の戦力としていた。
その頃、ムシャカマルはと言うとある工作をするため一足先に護衛200人程と共に江戸に潜入していた。工作と言う程大したものではなかったが、土方・榎本の旧幕府軍本隊がスムーズに入って来られる様にするために障害物を蹴散らす、言わば先遣隊の様なものであった。ムシャカマルに同伴した護衛200人は旧幕府勢力の中でも手練れ中の手練れであり、言わば精鋭だった。ムシャカマル程では無いが先遣隊としては申し分の無いメンバーが揃っていた。
事実、これまでの大きな戦いでもこの先遣隊が敵主力勢力を叩けた為、本隊は楽に最後の詰めをするだけで良かった。忍者と剣豪を足して2で割った様な手練れがムシャカマルの周りにいたからこそ、ムシャカマルも自由に動けたと言える。土方・榎本はそんなムシャカマル率いる先遣隊に信を置いていた。
ムシャカマル率いる先遣隊のOKが出なければ、土方・榎本隊は進軍しないと言うスタンスを取れていた為、旧幕府軍勢力には一つの形が出来ていた。それはこれからも変えない。それが土方・榎本の方針であった。ムシャカマルの凄い所は200人の精鋭をバラバラに行動させるのではなく、細分化された部隊を一つにまとめて一つの戦力としているのであった。名剣士は策士にはなれない。と言う定説をムシャカマルは覆してしまっていた。4人一組を50小隊。ムシャカマルの頭の中で動くパズルのピースとなり、必勝の作戦を成功させる布石となっていた。
しかし、そんなムシャカマル達の前には一筋縄ではいかない実力者達が、ひしめき合い旧幕府軍勢力の前に立ちはだかっていた。




