和魂洋才
訳も分からぬ剣豪に未来を託す程旧幕府軍勢力もお人好しではない。しかし、目の前で鮮やかに新政府軍を倒すムシャカマルの快進撃にかけてみようと言う気持ちにさせるには充分な何かがあった。一度は敗れた旧幕府軍勢力がもう一度戦ってみようと思い直すのに時間はかからなかった。
北方に散らばっていた旧幕府軍勢力の結集は、榎本が引き受け土方は、ムシャカマルと行動を共にする事になった。その方が話が早いだろうと言う3人の意見が合致したと言うのが、その理由だ。ムシャカマルは不思議な男である。最前線で真っ先に死を恐れず飛び込んで行くくせに、その一方で周到に計画を立てる緻密さを兼ね備えている。今風に言えば突撃参謀とでも言えるだろう。
計画を立て腕組みをしているだけならどこにでもいる参謀であるし、突撃するだけならそれこそ優秀な戦士など星の数ほどいる事であろう。その両方を兼ね備え実行しているのがムシャカマルなのである。どちらか一方では駄目なのである。そんなムシャカマルには信念がある。それは、剣の時代を終わらせたくない。剣こそ最強の兵器と言う譲れない想いがあった。それは土方が諦めた夢を追い続けていると言っても過言ではない。
確かに西洋の兵器と西洋式軍隊は強力である。しかし、戦い方次第では刀でもまだ戦える。そんな気持ちがどこかにあった。ムシャカマルの強さはその胸に秘めた信念にあるとも言えるだろう。それはムシャカマルなりの武士wayであった。武士道ではなく武士way。武士道の和魂洋才バージョンとも言える。そう、ムシャカマルは立派な武士wayを持った紛れもないサムライだったのである。
榎本・土方を中心に北日本の旧幕府軍勢力は、一つに結集。その兵力は15万人を越える大軍勢となっていた。最早新政府軍もこれを無視する事は不可能な情勢になっており、ムシャカマルを筆頭に勢力を拡大して来た旧幕府軍勢力を討伐する為、いよいよ部隊を派遣する事を決定する。このまま易々と南下を許す事は出来ない。その為にはなるべく早い段階でムシャカマル等を討ち取る必要がある。そしてその時こそ維新が完結するのである。
徐々に徐々に南下を続けるムシャカマル達旧幕府軍勢力の前に、新政府軍の重鎮である松下康太(吉田松陰の婿養子)率いる5万人の軍勢が仙台で待ち構えていた。




