獅子奮迅流3の秘剣砂滑(すなめり)
無邪神様。ムシャカマルは鬼神の如き強さで幕府勢力の間で、そう呼ばれる様になっていた。獅子奮迅流も威力のある剣であったが、何よりもムシャカマルの剣の腕は郡を抜いていた。まだ敵勢力である薩長から遠い事もあって、新政府軍の実力者が彼等の目の前に姿を現してはいなかったものの、彼等が目をかけていたボスとは何度か遭遇していた。勿論、ムシャカマルも雑兵よりは手こずったが、獅子奮迅流3の秘剣"砂滑"あたりを繰り出していれば大抵の敵はあらかた倒せた。コルセアとの相性もよく、この盛岡辺りまでは目立った敵はいなかった。盛岡を抑えた夜、作戦会議の後土方と少し話をする機会があった。
「これからは新政府軍の反発は強くなるだろうな。」
「何、恐るるに足らん戦力でしかないさ。所詮賊軍さ。」
「我々から見たらそうかもしれないな。錦の旗を勝手に上げて。」
「土方?天下を取り直したらどうするつもりなんだ?」
「正直言って先の事まではあまり考えておらんからな。」
「私は天下に興味はない。まぁ、天下を取ったら好きにすれば良い。」
「ムシャカマルが求めるのは名誉や地位ではなさそうだな。」
「俗世間の事等私には関係無い事だからな。」
「江戸が近付いて来たが、これからどう戦うつもりだ?」
「今までと変わらないよ。お主は後ろでドンと構えていれば良い。」
「単純明快で分かりやすいな。まぁ、それが貴様の魅力か。」
「鬼の副長もよく喋るようになったなぁ。」
「知っていたのか?俺が新選組のNo.2だった事を。」
「信用の置けない輩に身を委ねるのは出来ないからな。」
「あの頃とは環境が変わったからな。よく考えてみれば。」
「地位も上がり責任も増したからじゃないか?」
「それもそうだが、昔よりは丸くなったのも事実かも知れないな。」
「刀一本で誠を貫いていた新選組に感心したのは確かだ。」
「俗世間の事に感心はないんじゃなかったのか?」
「榎本から聞いた。私はそれ以外の事は知らない。」
「まぁ、情報源はともかく、これからの敵は力を入れて来るぞ?」
「安心しろ。数が多ければ多いほど、獅子奮迅流は威力を発揮する。」
「頼もしい限りだな。絶対に敵に回したくないな。」
「馬鹿言うな。私も人の子。神ではない。」
徳川連合軍(旧幕府軍)の反撃はまだまだ始まったばかりであった。




