真実と嘘の狭間で
別れてから日時が経過していなかったせいか、青龍も水菜美もまた付き合おうとは、互いに直ぐには言えなかった。水菜美は進路も決まっていたし、早く復縁したかった。それによるマイナス面はほとんど無かったのだが、別れた時のわだかまりがまだ残っていた。そして、それを気にしていたのは、別れを告げられた青龍ではなく、別れを切り出していた水菜美の方であった。何故なら彼女は青龍に嘘をついていたからである。
未だにその事を伝えていなかった水菜美は引け目の様なものを感じていた。疑問なのは、そこまでして何故青龍と別れたかったのかと言う事である。水菜美はその事について、弁明した。
「太陽君には悪いけど、好きな人が出来たと言うのは嘘で、本当は少し青龍と距離を置きたかっただけの事。それを好きな人が出来たから別れたのは、私のミスであった。ただ正直に青龍と距離を置きたいと言えば良かった。」
と。要するに水菜美の嘘が重なった事でおかしな方向に事が流れてしまったのである。勿論、復縁を青龍と水菜美の二人が望んでいるなら、避けては通れない議題であり、水菜美としては正直に話し、青龍も正直な事が知りたかった。その事について親友の川合京子に相談してみた。
「ゴメンね。急に呼び出して。」
「水菜美?あんたと違ってこっちは受験を控えているんだから。でも気分転換には丁度良いわ。」
「単刀直入に聞くけど、嘘は良くないよね?何事も?」
「人として嘘は良くないよ。常識でしょ?」
「それが好きな人に関わる事だったら、全部正直に話しちゃった方が良いかな?」
「内容が良く見えないけど、正直に話しちゃった方が良いんじゃない?」
「やっぱりそうだよね。隠し事なんて良くないよね?」
「物凄く意味深な感じだけど、まぁ正直に言っちゃいな!」
「ありがとう。京子に相談して本当に良かったよ。」
「好きな人に対して負い目があったら、上手く行く恋も上手く行かなくなるわよ?」
「どういう事?」
「嘘と言う負い目が危機を招くかも。よくあるでしょ?嘘が傷を悪化させてしまう事があるって。」
「確かにそうだよね。応急措置は早めに…。」
「何だかよく分からなかったけど、大切な人には正直でいなさいよ。」
「うん。これからはそうする。今日は本当にありがとう。」
「さて、私もラストスパートかけることにするかな?勉強の方の。」
自分の身から出たサビである。この問題をうやむやにして置くことは水菜美自身の為にならないし、青龍との未来に禍根を残すだろう。




