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佐久間五十六厳選ヒューマンストーリー集  作者: 佐久間五十六


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叶わぬ夢

 巷では、クリスマスに年末年始とそこら中にカップルがいて、彼女彼氏のいない男女にとっては、これほどイライラする時期は他にない。

 青龍はそんな中家でバーチャルな世界に浸っていた。バーチャルな世界では現実の寂しさを考えなくて済むから良かった。人間は、こんなにも時間を潰す術を発達させているのかと思うと、不思議とおかしく思えた。

 受験生ならば、今頃予備校に缶詰め状態なのかもしれないが、青龍はそんなものとは無縁の就職組である。警察沙汰でもならない限り、就職の内定が取り消される心配はない。家でおとなしくしているのは賢明な選択肢と言えた。目障りなカップルも、不用意に絡んでくる不良に出会う事も無い。家にこもるのは一番安全な過ごし方であった。

 一方で、水菜美も青龍と似たような過ごし方をしていた。本来なら青龍と楽しく過ごしたかった水菜美ではあったが、三船太陽と別れた事すら伝えていない現状にあっては、ヨリを戻す舞台が整っていない。幸いにも志望校に推薦入学が決まっていた水菜美は、一人暮らしの準備として、東京都内の物件の下見に行くなど、春からの新生活の準備に時間を当てる事が出来た。

 続々と進路が決まって行く人が出始める中で、青龍も水菜美も貴重なスクールラブの時間を持て余していた。二人で手を繋いで初詣何て言う絵空事は、今年は叶わぬ夢となりそうである。高3ともなると、宿題もなくなり自分に必要な学習が出来る自主的なものに変わる。青龍は、もう使わなくなった教科書を暇潰しに見ていた。

 何の思い入れも無かったが、もう一生こうして勉強する事がないと思うと、感慨深いモノがあった。意外かもしれないが青龍は体育と数学が得意であった。公式や定理さえ覚えてしまえば、後は数字を当てはめれば答えが導き出せる。そんな無機質な所が好きだった。問題が解けた時の爽快感もやみつきになっていた。

 ただ、大学で数学を学ぼうとは思わなかった。理由は勉強はもう終わりにしたいと思っていたからであった。その思いが勝ってしまい、勉強する事に区切りをつけたかったのが、青龍の判断であった。一般社会に出る事を選んだのは、早く大人になりたいとか、そうした子供染みた理由ではなく、やりたい事も無いのはお金と時間の無駄になると考えていたからであった。

 

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