タバコとドライブ
時は無情にも刻一刻と過ぎて行く。すっかり冬本番となった高3の冬は、来春の就職に向けた活動が本格化していた。とは言え、青龍にとっては、ありがたい状況であった。
受験生がフラれたショックを糧に勉学に打ち込むのと同様に、青龍は社会人になる為の準備を進めていた。と、同時に自動車学校に通い普通自動車免許を取得しようとしていた。別に彼女が出来たらドライブに出掛け様としていた訳ではない。身分証明書代わりにはなるだろうと軽い気持ちであった。
親に全額出してもらい、薦められたから通っていたに過ぎない。高校生位になると、自分で何もかも決めたがるものであるが、青龍はそうした事はなく、割りと反抗期は少なかった。
春からは内定している会社の寮生活を送る事になる。18歳の男が歩む人生としては、ありきたりなものであった。就職を選んだ事について、別に息子を甘やかしていたとか、そう言う事ではない。青龍の両親は青龍に関心が薄かっただけである。自由奔放と言えば聞こえは良いが、悪く言えば無関心とも言える。
まぁ、それが青龍にとっては心地良かった。適度な距離感を保つ君井家を世間は無関心だと言うかもしれないが当の本人達には関係無かった。家族のルールは家族の数だけある。それを周囲がとやかくいうのはナンセンスと言うものである。今やれる事は今やる。それが君井家の家訓であった。
自動車免許を取るのもその一貫であった事は言うまでもない。マニュアル車の免許を取得したが、青龍は運転が上達するのが早く、約1ヶ月半のスピードで免許を取得した。まぁ、寮生活の青龍には車は必要ない。それでも親から軽自動車をプレゼントされた。
青龍は練習がてら、ドライブするのが、青龍の趣味になっていた。時間の使い方について困っていた青龍にとってはこの上無くありがたいアイテムであった。金欠の青龍ではあったが、ドライブに必要なガソリン代だけあれば、お金は要らなかった。
誉められたものではないが、遠出してタバコを吸うのが、気分転換になっていた。18歳の喫煙はばれたらかなりヤバイが、青龍は絶対にバレない方法でタバコを吸っていた。君井家の人間は喫煙者が多く、青龍喫煙のきっかけは叔父に薦められたものであった。




