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佐久間五十六厳選ヒューマンストーリー集  作者: 佐久間五十六


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マスタードソース

 田川が中堅幹部になり、仕事が楽しくなり始めた頃にはこんな話もあった。

 その日はお客様の出入りがそんなに激しくなく、マクドナルドからしてみれば閑散日とでも言う様な日であった。とは言え、そんな日でも当然来客はある。とある高校生?と見られるカップルはハンバーガー類やフライドポテトにマックシェイクと一緒にさりげなく、チキンマックナゲットを注文した。ソースはバーベキューソースを選ばれていた。

 その10分後。その高校生?の男性客がソースをカウンターに持ってきてこう言った。

 「あの?チキンマックナゲットのソースはバーベキューソースにしたはずですが?」

 クルーがレシートを確認すると確かにこのお客様はバーベキューソースを選ばれていた。

 「大変失礼しました。」

 と、男性客の持っているマスタードソースを交換しようとしたところ、その男性客はこう言った。

 「今までマスタードソース食べた事無かったから、御詫びの印にこのマスタードソースもう一つください。」

 対応したクルーは固まった顔をしていたが、その時田川は後ろにいて、そのてんまつを理解して部下にOKサインを出した。こうしたミスはチャンスに変えてこそ商売は成功する。ピンチはチャンスと言う言葉がある様に、この男性客の場合は、マスタードソースと言う未開拓のソースを確かめて貰うチャンスでもある。この一件が無ければこの男性客はマスタードソースの良さを知らずに今に至っていたかも知れない。

 それよりも新規分野を開拓する事で、マスタードソースに苦手意識を持っている人にも、クチコミが広がれば、それだけ顧客が増える事になる。勿論、リスクはある。マスタードソースが不味いと思われ、受け入れられ無ければ駄目だ。

 しかし、そのリスクをおかす心配よりも、そもそも注文した事にミスをすると言うヒューマンエラーを防ぐべきである。食品業界ひいてはファーストフード店にあっては、ヒューマンエラーの再発防止は如何なる時も、やらなければならない。ソースも含めてチキンマックナゲットのプライスは設定されている。ソースを間違えた店側に否があるのは間違いない。

 ただ、そこで場当たり的な対応をせず、男性客の要求を飲む事で、その場を納めようとした事は悪い事では無い。ソースの原価など10円20円の世界の話だ。たかだか10円20円。されど10円20円。どう捉えるかで大きな違いが出てくる。ソースを間違えただけでも、マクドナルドの看板に傷が付く事もある。単価の高低に関わらず、全ての商品がマクドナルドと言う顔を背負っている事を自覚する出来事であったと、田川は感じていた。

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