第5話マックシェイク
最近は見られなくなったが、マックシェイクと言うドリンクの遅咲きのエースが、マクドナルドにはあった。不動の人気を勝ち取るまでには、前途多難な道を歩んだ事はあまり知られていない。バニラやストロベリーやチョコ味に季節限定フレーバー等でマクドナルドは販売に注力をしたが、販売当初は甘ったるく、コカ・コーラやその他ソフトドリンクにとって変わる様な状態では無かった。
マクドナルドとしては日本人にはあの甘ったるいシャーベットが当初受け入れられられなかった事に原因があると考えていた。本家の米国がマックシェイクの発祥の地だが、米国民程味覚に鈍化している国はない。砂糖を大量にぶちこむシュガーインシュガーの文化のある国で生まれたマックシェイクは、確かに味覚に敏感な日本人には甘すぎた。
そこで日本マクドナルドは、甘さを抑えてマックシェイクを販売した所、新感覚スイーツとして徐々に日本人に浸透していった。ドリンクと言うよりは、コテコテのハンバーガー類やフライドポテトを食べた後のデザート的な感覚に近かったが、その人気はうなぎ登りで上昇した。フレーバーが何通りも登場し、顧客を飽きさせない事もマックシェイクの人気を上昇させる要因となった。
確かに、お茶や珈琲を食後に飲む習慣は当たり前で文化的に馴染みのある事だが、ハンバーガー類やフライドポテトを片手にマックシェイクを飲むのは日本人には斬新な事であった。ハンバーガー類→マックフライドポテト→マックシェイクと言う三本柱を確立させたマクドナルドは、順調に売り上げを伸ばして行く事になる。野球に例えるなら、先発→中継ぎ→抑えを確立出来た様なものである。後は打線の強化を組めれば良かったのだが、マクドナルドのほとんどの商品はホームランバッタークラスのパンチがあり、腹に重くのしかかる商品のオンパレードであった。
だからどんな打線を組んでも形になると言うか、試合で勝てるラインナップで勝負出来た。それだけマックシェイクの登場は、大きなインパクトを日本人に与えた。肉食文化が普及してきたとは言え、和食や洋食人気にファーストフード人気が負けていた時代。ジャンクフードはそこに割って入ろうとした。同等とまではいかなくても、競るレベルには持って行きたかった。それが本音だ。
マクドナルドからしてみれば、ジャンクフードと呼ばれるのは、屈辱であった。食べ過ぎれば確かに健康には良くないのかも知れないが、提供するクルーは一つ一つの商品に誇りを持ち、まるでレストランの様な感覚で丁寧にお客様に提供している。少なくともジャンクフードとして、提供しているつもりはない。




