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佐久間五十六厳選ヒューマンストーリー集  作者: 佐久間五十六


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100円を握り締めて

 これは田川がマクドナルドに入社して10年近くたった頃の事である。その当時は100円マックのラインナップが充実していない、と言うか無かった時代であり、100円マックが定着していなかった。その日は雨が降りしきる初夏の頃であった。夕方4時過ぎだっただろうか。一人のサラリーマンが100円を握り締めて、こうクルーに言った。

 「ハンバーガー1個と水!」

 勝手な憶測に過ぎ無いのだが、給料日の前でお金がないのであると察した。その頃は物価高ではなく、ハンバーガー1個100円の時代だった。

 「100円になります。」

 とクルーが言うとポケットの中から100円を出して、こう言った。

 「やっと食い物にありつける。」

 ハンバーガーと水を受け取ったサラリーマンは、近くの席に猪突猛進してハンバーガーをあっという間にたいらげた。そして帰り際に田川にこう言って帰られた。

 「コンビニも、100円ショップも皆100円の品は全部105円なんだ。駄目元マクドナルドに行けば100円でハンバーガーが食べられる。そう思い出して、藁にもすがる思いでここに来た。ありがとう。命の恩人だよ。」

 そのサラリーマンの後ろ姿は、来る前とは別人の様な生気をみなぎらせていた。クルーから、後で詳しく説明して貰った時は、現実社会の厳しさを感じた。と同時に自分達の仕事が命を繋いだ事に感銘を受けた。

 マクドナルドでは、税金による端数つまり、一円単位での価格表記はしない。それはお客様の立場に立てて考えれば分かる。レジで細かいお金は出しにくいものである。ましてやマクドナルドでは、用意が出来ている商品はレジで会計中に提供する。時間がかかる商品はナンバーカードを渡して後出しで来るのを待つ。ファーストフード店とは言え即座に提供出来ない商品はある為、出来るだけ急いで準備はしておく様にする。商品を持ち荷物を持ち小銭を出される。これほど鬱陶しい事はないだろう。

 そう言う気配りをするのが、マクドナルド流である。万人受けする様なやり方ではなく、あくまでもお客様目線でカスタマーファーストでやるのがマクドナルドの流儀である。お金がないサラリーマンが100円を握り締めてさ迷う事は今は無いのかも分からないが、いつどこで誰が、このサラリーマンのようになってしまうかは分からない。

 そう言う時の為のセーフティネットとして、マクドナルドの低価格帯商品はあるのかもしれない。それはそれでとても光栄な事である。お金のある人も無い人にも、笑顔を届けられば幸いだ。

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