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佐久間五十六厳選ヒューマンストーリー集  作者: 佐久間五十六


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AM10:30の恐怖

 これもまた田川の若い頃の話である。マクドナルドでは時間の切り替え時は、その時の状況に応じて行う様にするという不文律があった。勿論、それはマクドナルドに限った話ではないのであるが、田川の若い頃は全くその重要性を感じていなかった。

 あるサラリーマン風の男性客がAM11:00頃来店してきて、ソーセージエッグマフィンと珈琲を注文して来た。珈琲は提供可能だが、ソーセージエッグマフィンは朝マックのメニューである。その為、提供出来ない。つい30分前までは販売していたのに、売れない事は無いのだが、マクドナルドでは時間厳守である。

 最悪クルーがお奨めをさりげなく誘導するという禁じ手はあるが、それはあくまで"禁じ手"である。この時田川はマニュアルを優先させた。今となってみれば、もっと良い方法もあったのかもしれないが、当時の田川はマニュアル外の未経験客に対して、絶大なる信頼を寄せるマニュアルに頼った。

 「お客様、大変申し訳ありませんが、そちらの商品はAM10:30で販売を終了している商品でありまして、今でしたらレギュラーメニューから御注文頂けませんか?」

 今思えば、余計なお世話かもしれないが、10分15分の話ではないのだから、マニュアルに従っていれば怒られないと思った。だが、その考えは甘かった。

 「俺はよ、ソーセージエッグマフィンを食わないと力が出ないんだよ。っていうかさ、材料あるなら作れるだろう?ま、いいや。俺家の近くにモスバーガー(競合店)あるから、今度そっち行くわ。ああ!胸くそ悪。」

 言いたい事をバンバン言われたが、この対応は当時の店長に怒られた。それは自分の判断で済ませたからであった。上司にまず相談すべきなのに、マニュアルに従ってしまった事を怒られた。そしてこう言われた。

 「一人の常連客を失う事は100人の一見樣を失う事を意味する。」

 それは、戒めであった。一人の常連客を失う事の損失を田川は分かっていなかった。それがやがて噂話となり、口撃により100人の一見樣を失わせる。まぁ、常連客に対しては田川のマニュアル接客はいけなかった。無論、その日の事はしっかりと記憶している。天下のマクドナルドと言えど、競合店に行かれては名が廃ると言うものである。自分達には、No.1のプライドがあるから。AM10:30の恐怖はこれからも訪れるだろう。

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