表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
佐久間五十六厳選ヒューマンストーリー集  作者: 佐久間五十六


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/360

第1部青い恋水・第1章馴れ初め

 「青龍、頼む捕ってくれ…。」

 君井青龍(きみいせいりゅう)の親友である奥野永作(おくのえいさく)の願いも空しくセンターを守っていた青龍の頭上を打球は通り過ぎてバックスクリーンへと、飛び込んで行った。こうして、君井や奥野の夏は終わった。

 「準々決勝敗退か。まぁ、2回戦敗退予想だったから、上出来じゃないかな?永作だってそう思うだろ?」

 「どうせなら折角だし、決勝まで行って甲子園決めたかったな。」

 「おいおい。俺達は県立あすなろ高校野球部だぞ?名門私立でもなければ、古豪公立でもない。もっと現実見た方が良いよ。」

 それはこれからの自分に対するメッセージでもあった。高校生にとっては、現実とは進学か就職かどちらかを選択するものであり、それは大抵の場合部活を引退する事でやって来る。将来の夢や目標が正確に定まっている場合は、進路は比較的スムーズに決まる。

 しかし、大抵の高校生は進路で悩みぶらぶらしてしまう。君井青龍も奥野永作も、そんな高校生であった。野球部の元主将(キャプテン)だった青龍は、野球部を引退してからは、その穴埋めに勉強を始めた。特に進学の希望は無い。ただ分からない事が分かる様になるのは気持ちが良かった。成績は中の中とまさしく平凡な平均的なものだったが、勉強に本腰を入れ始めた夏からはうなぎ登りに成績は上がって行った。

 野球しか知らない馬鹿だと思われるのが嫌で、必死に勉強を始めたと言うのもある。県予選のベスト8くらいじゃ、プロのドラフトの網に引っかかる事も無いし、大学のスポーツ推薦にも引っかかる事はないだろう。だから、自分の力で自分の道を切り開く為には、勉強をするかそれを諦めて就職活動をするしかない。

 その中で青龍は勉強を選んだ。将来の夢や目標はまだ無く、志望校もまだ決まっていないが、とりあえず親を納得させる為には、結果を残すしか無かったのである。予備校等には通わずひたすら我流でガムシャラにやった。野球部時代からの青龍のモットーがガムシャラであった。何の雑念も無く、物事に取り組めるのは幸せな事であった。

 俺が仙木水菜美(せんもくみなみ)と言う女性に出会ったのはそんな時だった。まだ暑さも残る晩夏の頃に、遅い?青春がやって来たのである。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ