第九十三話 僕は働きすぎ?
翌朝、早速使用人ギルドから派遣された人がやってきました。
更には、お母さんがエミリアさんから聞いた人に連絡を取ったら、三人来てくれる事になりました。
朝一で僕も面談したけど、皆さんとても良い人です。
勿論、ライラちゃんチェックもオッケーです。
「エミリアもそういう事なら早く言ってよ」
「そうそう。水臭いよ」
「ちょうど次の仕事先を探していた所だったから、ナイスタイミングよ」
「悪かったわ。これからは宜しくね」
エミリアさんに仲良く絡んでいるのは、元薬師ギルドの職員でエミリアさんと同じ年らしいです。
三人ともスタイル抜群なのは、きっと元薬師ギルドマスターの趣味だからだよなあ。
仕事を探していたという頂戴良いタイミングだったので、三人とも正職員として働いてくれます。
「まだ小さいクロノ殿下がなさる書類の量ではありません」
「クロノ殿下はギルドマスターなのですから、最終承認が必要な書類だけ見て頂ければ良いです」
「人員はもう少し増やしても大丈夫でしょう」
「私が、エミリア殿と人員について相談しましょう」
そして、使用人ギルドからは四人派遣されたけど、全員が僕の仕事量を見てびっくりしていました。
直ぐにエミリアさん達と話し合いがされて、書類の整理や承認ルートが改善されました。
「あの、これだと僕がチェックする書類が殆ど無くなりますけど」
「逆にギルドマスターにチェックして貰う書類というのは、余程の書類という事です」
「普通は、我々が行なった仕事の報告を受ける事になります」
「クロノ殿下は王族としての義務もありますから、スケジュールには余裕をもって下さい」
おお、僕の仕事がないと言うと、逆に皆から当然だと言い返されてしまったぞ。
お母さんも当たり前だという感じで、うんうんと頷いています。
今まで社畜根性全開で仕事をしていたから、凄い違和感があるなあ。
「クロノには勉強しないといけない事もあるのだから、皆に任せる所は任せないとね」
「はい、クロノ殿下は頑張りすぎです。もう少し子どもらしくあられても良いかと」
追加で、お母さんとマーサさんまで色々と言われてしまった。
うーん、それだと何をしていいのか分からないぞ。
コンコン。
「クロノ、お客さんだよ。バンザスの冒険者ギルドマスターだよ」
「あっ、はーい」
アンナお姉ちゃんが、僕への来訪者を教えてくれた。
バンザスの冒険者ギルドマスターとは、少し久しぶりだなあ。
「おお、そういう事か。確かにクロノは少し仕事をし過ぎだな」
「えー!」
バンザスの冒険者ギルドマスターは、王都の冒険者ギルドへ打ち合わせに行く途中らしく、ついでに僕の様子を見に来たそうです。
そしてギルドマスターに朝あった事を伝えたら、ギルドマスターにも僕は働きすぎと言われてしまった。
「まあ、クロノの性分だから仕方ない所もあるだろうな。俺だってバンザスの冒険者ギルドマスターだから分かるが、何でもかんでも俺がやる訳にはいかねえ。ギルドマスターなら、ギルドマスターにしかできない仕事があるんだぞ」
「ギルドマスターにしかできない仕事?」
「そうだ。ギルドマスターは、いわばそのギルドの顔だ。そのギルドがどう思われるかは、ギルドマスターにかかっている。公爵家の事が落ち着いてからで良いが、もう少し外との話し合いを増やしても良いな」
ギルドマスターが話した内容に、お母さんもマーサさんも他の人も激しく同意してきます。
僕にしかできない仕事を頑張ればよい。
その言葉が、ずーんと僕の中に残りました。
「まあ、お前さんはまだ子どもだ。これから勉強をして、色々な経験をする事が優先だ。今まで苦労してきたからここまでできているが、これからは勉強にシフトを置いた方が良いな」
「その話、他の人にも言われました」
「だろう? 俺はクロノの事を赤ん坊から見てきたんだから」
ガハハと笑いながら、ギルドマスターは他の人と同じ事を言っていました。
中々難しいけど、今後の事を考えても良いのかななんて思ったりもしました。