第九十二話 使用人ギルドの会長と会うことに
昼食の後で仕事をしていると、お母さんがとある事を話してきました。
「うーん、やっぱり事務員が足りないわね。四人にはもっと管理よりの仕事をしてもらいたいのよ」
「でも、直ぐには増やせないよね。お母さん、どうしたらいいの?」
事務員の不足は、僕も感じています。
というか、僕が書類整理をしないといけない状況だもんね。
すると、お母さんはエミリアさんに質問をしていました。
「エミリアさん。元の薬師ギルドにいた人で、信頼できる方の連絡先は分かるかしら?」
「はい、数名は王都に住んでいますので連絡先を把握しております。ギルドの寮に住んでいた方は、地方に戻ってしまっております」
「その方の連絡先を教えて頂戴。私から連絡するわ」
先ずはエミリアさんの元同僚に、再び薬師ギルドで働いて貰えないかと連絡をするそうです。
確かに知識とかがあるから、とっても大きな戦力になるよね。
「新規採用も進めましょう。募集をかけますね」
「ええ、お願いね」
エミリアさんからも新規採用を進めるとあったので、お母さんからゴーサインが出ました。
でも、直ぐに人手不足は解消されません。
「クロノ、薬師ギルドマスターとしてのお仕事よ。お母さんとある場所に行きましょうね」
「分かりました」
「ライラもいく!」
という事で、お母さんとマーサさんとライラちゃんと共に馬車に乗ってとある所に向かいます。
やってきたのは、商店街の一角にある大きな建物です。
馬車から降りた僕達は、そのまま大きな建物の中に入ります。
「王太后様、クロノ殿下、お待ちしておりました。ようこそ使用人ギルドへ。会長の所にご案内いたします」
「ええ、宜しくね」
建物に入ると、直ぐに侍従の格好をした女性が出迎えてくれました。
ここは使用人ギルドって所なんだ。
先触れの人が行っていたのか、僕達は直ぐに会長の部屋に案内されました。
コンコン。
「会長、失礼します。王太后様とクロノ殿下がお見えになられました」
「おお、そうか。入ってくれ」
案内してくれた人が会長室と書いてある部屋の扉をノックすると、部屋の中から渋い男性の声がしてきた。
扉を開けてくれたので、そのまま僕達は部屋の中に入ります。
部屋の中ではとても格好いいスーツをビシッと決めた、物凄くダンディな方が立っていました。
「私は使用人ギルドの会長であるグレイと申します。王太后様、お久しぶりにございます。そしてクロノ殿下、初めてお目にかかります」
うん、一目見て会長さんと分かるオーラがあるぞ。
商工ギルドのギルドマスターとは、また違った意味で凄い人だなあ。
「会長もお元気そうで何よりですわ」
「初めまして、クロノと申します」
僕とお母さんは、会長さんに握手しながら挨拶をします。
「ライラです!」
「おお、陛下を魔法から救った勇敢な少女ですな。街の人の噂になっておりますぞ」
「そーなんだ」
ここでも、ライラちゃんが魔法障壁を使って僕達を守った事が話題になっています。
今度の炊き出しの時にも、街の人から色々と言われそうだなあ。
僕達はソファーに座って、色々と話をする事になりました。
「今日お願いに来たのは、薬師ギルドに何人か使用人を派遣して欲しい事です」
「以前の薬師ギルドが溜めていた書類に各地から届く報告書もあり、募集をかけていますがどうしても今の職員では手が足りません」
「うーん、以前の薬師ギルドの評判の悪さは使用人ギルドでも聞いておりましたが、そこまで悪い状況でしたか」
お母さんと僕の話を聞いた会長は、腕を組んで唸ってしまった。
以前の薬師ギルドは、賄賂を作るのに一生懸命だった組織だからなあ。
「あと、できればスケジュール管理ができる使用人もお願いします。僕の秘書もいるのですが、彼女だけでは大変なので」
「クロノ殿下はお優しいですな。読み書き計算は必須ですので、以前屋敷に勤めた事のある者なら適任かと。執事経験者も登録しておりますので、声をかけておきます。明日朝には、新しい薬師ギルドに向かう事ができましょう」
「ありがとうございます。本当に助かります」
会長さんは、直ぐに派遣してくれる人の選定に動いてくれる様だ。
本当にありがたいです。
「クロノ殿下なら、薬師ギルドを立て直す事ができましょう。我々も微力ながら、お手伝いさせて頂きます」
「いえいえ、本当に助かります。これからも宜しくお願いします」
話もすんなりと纏まったので、僕は会長さんと握手します。
会長さんはとっても大きな手だけど、温かい手でした。
「クロノ殿下、ギルドマスター会議でまたお会いしましょう」
「はい、宜しくお願いします」
僕達が帰る際に見送りに来てくれた会長さんから言われたけど、一週間後のギルドマスター会議でも会うんだ。
良い人で良かったと思いながら、僕達は馬車に乗り込みました。