第九十話 商工ギルドマスターとの面会
コンコン。
「失礼します。クロノ殿下が参られました」
僕はマーサさんの先導で、執務室に入ります。
ソファーのある所には、恰幅の良い中年男性が立っていた。
見た感じヒゲを生やした商人って感じだし、ライラちゃんチェックも問題なさそうだ。
僕はお母さんと共に、その人の前に立ちます。
「クロノ殿下、初めてお目にかかります。王太后様におかれましては、お久しぶりでございます。商工ギルドのギルドマスターを務めさせて頂いております、ウェーク商会のウェークと申します」
「初めまして、ウェークさん。クロノと申します。いつも商品のやり取りでお世話になっております」
「ライラです!」
商人かなと思ったら、まさかの商工ギルドのギルドマスターだったぞ。
とりあえずお互いの自己紹介も終わったので、僕達はソファーに座ります。
因みにライラちゃんは、ちゃっかりとお母さんに抱っこされています。
「私も宣誓式を見ておりましたが、そちらの少女が皆様の危機をお救いになったのですね」
「はい、まさにそうですね。ライラちゃんが魔法障壁を展開してくれなければ、僕達は危ない所でした」
「ライラちゃんには、後でご褒美をあげないとね」
「えへー」
マーサさんが入れてくれたお茶を飲みながら、最初は軽く談笑をします。
宣誓式の事からライラちゃんが活躍した事に話題がかわり、皆でライラちゃんを褒めています。
ライラちゃんには、僕からもご褒美をあげないとな。
「いつも薬師ギルドの方には、我々もお世話になっております。新しい薬師ギルドが稼働するという話を聞きましたので、ご挨拶に参ったのです」
「商人の耳の良さは凄いですね。確かに今日も商会に品物を頼みましたが、こんなに早くギルドマスターがくるとは思いませんでした」
「ちょうどエミリア様より注文を受けたのが、我がウェーク商会でございます」
エミリアさんがいつも発注しているのが、たまたま商工ギルドマスターの商会だったんだ。
新しい薬師ギルドが動いて間もなかったのにびっくりしたけど、そういうカラクリがあった訳ですね。
「品物の納品に関しては、今後もエミリア様を通じて行なわれます。また、薬草の納品も従来と同様にさせて頂きます」
「はい、これからも宜しくお願いします」
「治療研究所にも品物を納めさせて頂いておりますので、我々にとっても非常に有り難く思っております」
治療研究所も稼働するにあたっては色々な道具がないと行けないし、僕達はポーション作りに必要なものを定期的に購入するから商工ギルドにとってはお得意様なのだろう。
これからも、お互いに良い関係でありたいものだ。
と、ここでお母さんから商工ギルドマスターに追加の話が。
「差し当たって、商工ギルドにお願いがあります。ポーションを詰めるガラス瓶や栓の納品を増やして貰いたいのです」
「王太后様、畏まりました。明日より納品を増やすように対応いたします。それにしても、理由が理由なだけに複雑な物がございますな」
「ええ、我々も対応に苦慮しております。平和な世の中にする為にも、ここは踏ん張りどころですわ」
元王妃の出身である公爵家との戦いが近い事は、商工ギルドマスターも勿論知っている。
争いのない世の中になって欲しいのは、皆の願いだよね。
商工ギルドマスターとの話はこれで終わりとなり、僕は商工ギルドマスターを見送った後はそのまま執務室で仕事を続けます。
「クロノ、お母さんは屋敷に戻るからね。夕食迄に帰ってくるのよ」
「うん、分かった」
「ライラはおかあさんについていく!」
お母さんとライラちゃんを見送った後、僕は書類をチェックします。
明日から本格的に薬師ギルドが稼働するし、頑張らないとな。