第九話 もうすぐ五歳 僕の毎日です
僕が産まれてから、もうそろそろ五年の月日が流れようとしていた。
「クロちゃん、こっちに濾した液体を持ってきて」
「はい、ドリーお姉ちゃん。持ってきたよ」
「ありがとうね」
僕は赤ちゃんの頃から相変わらず孤児院での生活が続いていて、拾われた時から孤児院の皆で寄り添って生きてきた。
というのも、孤児院の院長が僕達の前に殆ど姿を見せなくなり、孤児院は僕が赤ちゃんの頃よりもより一層資金難になったからだ。
ここ数年は春になると院長がふらりとやってきて成人した孤児院の仲間を連れて行き、少しばかりのお金を置いていった。
当然だが少しばかりのお金では僕達は生活できないので、皆で街の人のお手伝いをしてお金や食べ物を貰っていた。
現在僕の暮らしている孤児院では、僕を含めて八人が生活をしています。
孤児院最年長は今年十二歳になる犬獣人のゴレスお兄ちゃんとドラゴニュートのアンナお姉ちゃん。
ゴレスお兄ちゃんは、お顔が犬に似ているけど犬獣人で、ねずみ色っぽい毛並みでワーウルフともいわれているんだって。
ちょっとぶっきらぼうだけど、僕達には優しいお兄ちゃんです。
アンナお姉ちゃんはドラゴニュートさんで、いつも優しくてちょっと青っぽいロングヘアをしています。
それと立派な角と尻尾が特徴で、しかも家事も得意でお料理も上手なんだ。
それに八歳になったばっかりの天使族のララ、リリお姉ちゃん達が冒険者として活動しています。
この国では、八歳にならないと冒険者として活動出来ないんだって。
ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんは白っぽいボブヘアで、背中に小さな羽がついています。
明るくて見た目はそっくりだけど、孤児院の皆はちゃんと二人を見分ける事ができるよ!
因みにゴレスお兄ちゃんは剣技、アンナお姉ちゃんがメイスでララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんは魔法が使えます。
ゴレスお兄ちゃんは皮の鎧で、アンナお姉ちゃんは教会のシスターの様な服で、ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんは白いワンピースを着て冒険をしています。
因みに僕達の中で一番強いのがアンナお姉ちゃん。
メイスで敵を吹き飛ばすのが得意で、ゴレスお兄ちゃんもかなわない強さです。
六歳になるくま獣人のゴードンお兄ちゃんは、お店のお手伝いをしたり薬草を集めて冒険者ライセンスを持っているお兄ちゃんとお姉ちゃんに渡しています。
ゴードンお兄ちゃんはゴレスお兄ちゃんの様に動物の成分が大きい獣人だけと、今はまだ小熊なのでこげ茶の毛並みがもふもふで気持ちいいんだ。
そしてもうすぐ十歳の猫獣人であるドリーお姉ちゃんともうすぐ五歳になる僕は、薬草採取をしつつ孤児院にいる事が多いです。
ドリーお姉ちゃんは猫獣人で、人間の成分が多いのか耳と尻尾以外は殆ど人間さんです。
とっても頭が良くて、街の人から貰った絵本とかも読んでくれるよ。
僕とドリーお姉ちゃんが孤児院にいる事が多いのには、二つの理由があるのです。
「にーに、ねーね」
「はいはい。ライラちゃん、ちょっと待っていてね」
一つ目の理由は、僕よりも小さい今年三歳になる悪魔族のライラちゃんの存在だ。
流石にまだ三歳なので、うちの誰かが面倒を見ないといけない。
ライラちゃんは悪魔族で、灰色のショートカットに羊さんみたいな小さな角があります。
こうもりみたいな小さな羽が背中にあって、よくぱたぱたと僕達の周りを飛んでいます。
ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんも空を飛べるけど、実は魔法で空を飛んでいるんだって。
そして二つ目の理由が、今僕とドリーお姉ちゃんがやっている事、ポーション作りだ。
孤児院の裏手の森には、質の良い薬草と毒消し草が通年を通して生えていて、最初は薬草と毒消し草を採取してゴレスお兄ちゃんとアンナお姉ちゃんに売ってもらってお金にしていたの。
そしてある日、ゴレスお兄ちゃんとアンナお姉ちゃんは冒険者ギルドでギルドマスターにこう言われたんだって。
「お前たちならポーション作れるんじゃない?」
しかも、たまたまギルドにギルドマスターの知り合いでポーションや毒消しポーションを作れる薬師を兼任している冒険者がいて、早速僕達もポーションの作り方を教えてもらったの。
そうしたら、僕とドリーお姉ちゃんに薬師の才能があったのだ。
こうして、去年から僕とドリーお姉ちゃんはライラちゃんの面倒を見つつ、ポーションと毒消しポーション作りに励んでいるよ。
ポーション作りを教えて貰った冒険者から中古のフラスコなどをタダで譲って貰い、ポーションを入れるガラス瓶などは王都に行く冒険者や商人に纏めて買って貰っているんだ。
僕とドリーお姉ちゃんがポーション作りを始めてからは、ぜいたくは出来ないけどそれなりの生活を送れるようになったんだ。
ドリーお姉ちゃんがとっても頭が良いのもあるけど、僕がとある魔法を使える様になったのも大きいんだ。
「ドリーお姉ちゃん、このポーションはばっちりだよ」
「流石ね。クロちゃんの鑑定魔法は便利ね」
僕に魔法の適性があって鑑定魔法を使える様になったので、品質の良いポーションが納品出来る様になり買取金額も上がったのだ。
ギルドとしても質のよいポーションが納品されるのはありがたいそうで、冒険者もそこそこいるので直ぐに売り切れてしまうそうだ。
因みに普通人族や獣人は魔法が使えなくて、ドラゴニュートやエルフや天使族や悪魔族が魔法を使えるんだって。
因みにアンナお姉ちゃんは生活魔法で、ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんは光魔法。
ライラちゃんは回復魔法が使えます。
うーん、何で僕って魔法が使えるんだろう?
こんこん。
おっと、玄関ドアを叩く音が聞こえた。
誰か来たのかな?
「クロちゃん、お姉ちゃん今手が離せないから」
「はーい」
僕は、ふわふわと宙に浮いているライラちゃんと共に玄関に向かった。
すると、そこにはすっかり顔なじみになった冒険者が立っていたんだ。
「よ、今日もポーション作りかい?」
「はい、頑張って作っています」
「頑張っているわね。これ、差し入れよ」
「わあ、ありがとうございます」
僕を森から見つけてくれた冒険者のバーサックさんとリリーナさんが、僕達に差し入れを持ってきてくれたの。
今回はお肉の差し入れだった。
二人は僕を見つけてくれてから僕の様子が気になって、定期的に差し入れを持ってきてくれるの。
あれ?
いつもバーサックさんと一緒にいるオオカミのヴォルフはどこに行ったのだろう?
「ウォフ」
「きゃっきゃ」
あ、ライラちゃんがいつの間にかヴォルフの背中に乗って遊んでいた。
実は、ライラちゃんも赤ちゃんの時にヴォルフが発見したのだ。
それ以来の仲なので、一人と一匹はとても仲が良かった。
僕も未だにヴォルフにお顔をべろべろされるけどね。
「ほら、ヴォルフ帰るぞ」
「ばいばーい、またね!」
「ウォフ」
ヴォルフに遊んで貰ってご機嫌になったライラちゃんは、元気よくヴォルフに手を振っていた。
ヴォルフも返事をしてバーサックさんとリリーナさんと共に帰っていった。
「わあ、今日はごちそうだ」
「後でバーサックさんとリリーナさんにお礼をしないとね」
夕方になると、冒険者やお手伝いをしていたメンバーも帰ってきた。
久々にお肉が食べられるとあってゴレスお兄ちゃんはテンションが上がっているけど、お礼の事を考えているアンナお姉ちゃんは流石だと思ったよ。
そして、料理上手のアンナお姉ちゃんがささっと晩御飯を作って皆で食べます。
「今日は中々の成果だったよ」
「リリもばっちり!」
皆で食事をとりながら、今日何があったかを話します。
ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんがいう通り、冒険者組は中々の成果だったらしい。
四人で連携して獲物を倒しているそうで、バーサックさんとリリーナさんからも初心者なのに中々の腕前って言われていたよ。
「僕もお手伝い頑張ったよ!」
「ゴードンも偉いわ」
「えへへ」
ゴードンお兄ちゃんも小さい体だけど力持ちなので、街の人からよく声がかかります。
もふもふの毛並みをアンナお姉ちゃんに撫でて貰って、ゴードンお兄ちゃんも上機嫌です。
「ポーションも必要な分出来たから、明日ギルドに納品しにいきますね」
「クロちゃんもドリーもよく頑張ったね」
「じゃあ、明日朝皆でギルドに持っていくか」
こうして今日も一日が終了します。
皆で協力して生活しています。
僕達は人種もばらばらで血もつながっていないけど、とっても仲良しです。
僕達はこんな感じの毎日を送っています。