第八十七話 新しい薬師ギルドが動きだす事に
そして、僕達を乗せた馬車は無事に宮殿に到着しました。
馬車から降りた僕達は、その足で会議室に向かいます。
「後を任せてしまって申し訳ない」
「いえ、これは僕達の仕事ですから」
「そう言って貰うと、こちらとしても助かる。先ずは座ってくれ」
アルス兄様からの労いの言葉を聞きながら、僕達は席に座ります。
そして、カーター兄様から現在までの調査状況が報告されました。
「まだ現時点での調査結果だが、犯人は公爵家と繋がりのあるジェナス子爵家の者だという事が分かった。音と煙が出る魔導具で周りの意識を集めた後、一気に攻撃してくる手筈だった様だ」
「あっ、だから爆発音の割に怪我人が少なかったのは、その魔道具なんですね」
「ああ、音と煙が出る魔導具を使って陽動を仕掛けようとしたらしい。実際に魔法を放ってきたが、クロノの所のライラによって助けられたがな」
広場での爆発音の割に怪我人が少ないのは、陽動の為だったのか。
とはいえ、これから本格的な調査が行われるのを待つしかないだろうな。
「既に王都にあるジェナス子爵の屋敷の捜索を行っている。とはいえ、そこまで目ぼしいものは出てこないだろう」
「そうだな。公爵家が子飼の貴族を使って実力行使をしてきた、そういう構図に変化はないだろうな」
カーター兄様もアルス兄様も、はあっと深い溜息をついていた。
捜索の結果に関わらず、公爵家との紛争は避けられないからだ。
「ジェナス子爵家は法衣貴族だ。当主は逃げている可能性が高いが、領地を持っていないのが幸いだ」
「公爵家も、尻尾切りとして影響が最小限になる為に、ジェナス子爵を選んだのだろう」
実際に公爵家を捕まえた訳ではないので、カーター兄様もアルス兄様も憶測でしか物事を話せていない。
とはいえ、ほぼ間違いないだろうな。
「軍務卿には、出兵の準備を命ずる。証拠を押さえたら、直ぐに公爵領に乗り込むぞ」
「畏まりました」
そして、遂に公爵家との全面対決に向けて出兵準備となった。
王家への反乱行為だし、もうどうしようもないだろうな。
「そして、クロノにもお願いがある。新たな薬師ギルドの本部として押さえてあった建物を使って、本格的なポーションの生産にあたって欲しい」
「分かりました。僕もできるだけ戦死者を減らしたいと思っていますので、できる限りの事を行ないます」
「すまんな。人手は出すぞ」
そして、遂に新しい薬師ギルド本部を動かす事にゴーサインが出ました。
エミリアさんを中心に水面下で動いて貰っていたので、僕達はいつでも動けます。
それに正直な所、屋敷の離れではポーションを作るスペースが足りなくなってしまったんだよね。
この後はお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様が残って、もう少し詳しい話し合いをするそうです。
僕は、一足先にマーサさんと共に屋敷に戻る事になりました。
皆にも、薬師ギルドの事を伝えないといけないよね。
これから、とっても忙しくなるぞ。