第八十一話 一足先に宣誓式会場に到着
そして、いよいよ宣誓式の当日になりました。
僕達は朝早く起きて、昨日サイズ合わせをした服を着て早めに会場となる広場に向かいます。
「お母さんは、兄様と姉様と一緒に来るんだよね?」
「そうよ。最後の打ち合わせを行うわ。クロノはこちらの事を気にしないで、広場に行ってね」
僕は紹介されたタイミングで前に出てお辞儀をするだけなので、宣誓式では特にやる事はありません。
主役となるアルス兄様とカーター兄様は、本当に忙しいだろうね。
という事で、僕は孤児院のメンバーとマーサさんと共に広場に向かいます。
勿論、騎士の護衛が付きます。
「あ、薬師ギルドで一緒になった騎士さんですね」
「はい、本日は宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
たまたまなのか、僕達に付いてくれた騎士は薬師ギルドに一緒に行った人だった。
知り合いの人が護衛についてくれるので、とても安心です。
馬車に乗る時に挨拶をして、いよいよ出発です。
ガタゴト、ガタゴト。
「ねー、くろのにーに、はたがついているよ」
「そうだね。街のアチラコチラに、旗や装飾品が飾ってあるね」
「きれーだね!」
馬車の窓からライラちゃんが顔を覗かせているけど、街のアチラコチラで宣誓式に合わせた装飾品や旗が飾られています。
街もお祝いムード一色です。
そして僕達の乗った馬車は、宣誓式の会場となる広場に到着しました。
既に広場には、チラホラと人が集まっています。
因みに会場の広場と人々が集まる場所には緩衝帯が設けられていて、会場と人の集まる所には少しスペースが出来ています。
「お、弟殿下か。今日はキチンとした服装だな」
「流石に今日は、僕だってちゃんとした服装をしますよ」
「うんうん、似合っているぞ。まるで殿下の様だぞ」
「一応、僕は本物の王子ですよ」
「がはは、分かっているぞ」
炊き出しの時に来る人がいたので、僕は緩衝帯越しに話をします。
思わず兵がギョッとする話の内容だけど、僕は気にしていないので特に注意する事はなかった。
これが元王妃や元宰相だったら、話しかけただけで殺されたかもしれないな。
「おやおや、皆も良い服を着ているね。とても似合っているよ」
「やったー!」
「ふふふ、ライラちゃんはいつも可愛いわね」
これまた炊き出しの時に治療を受けにくるお婆さんから褒められて、ライラちゃんはくるくると空を飛んでいます。
僕だけでなく、皆も街の人に顔を知られているからね。
僕やライラちゃんだけでなく、他の人も街の人から声をかけられています。
因みに一番人気はゴードンお兄ちゃんです。
ゴードンお兄ちゃんはぬいぐるみの様な容姿なので、街の人にとっても人気があります。
ここでララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんに、とある事を聞いてみます。
「お姉ちゃん、周りに不審な人がいるかな?」
「うーん、今は大丈夫だよ」
「ライラも遊んでいるし、大丈夫だね」
また不審な人が広場に来る可能性があったので、念の為にララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんに確認して貰いました。
取り敢えず、今は大丈夫だね。
でも、念の為にドリーお姉ちゃんにも確認してもらいます。
ドリーお姉ちゃんは攻撃魔法や回復魔法が使えない代わりに、僕と同じ鑑定魔法が使えます。
そしてドリーお姉ちゃんは頑張って魔法の訓練をしたら、探索魔法も使える様になりました。
「大丈夫よ、悪意のある反応はないわ」
「それは良かった」
直ぐにドリーお姉ちゃんが探索魔法を使って周囲の様子を調べてくれたけど、今は不審者はいない様だ。
ホッと一安心していたら、ゴレスお兄ちゃんとアンナお姉ちゃんが僕の頭を軽くポンと叩いてきました。
「安心しろ。ここには兵もいるし俺達もいるんだ」
「そうね、ここはお姉ちゃんにお任せよ」
「ありがとう!」
皆で僕達の事を守るって言ってくれた。
僕はまだ五歳だから、とっても心強いよ。