第七十九話 宣誓式まであと一週間
「いやはや、ステラが不審者に襲われたと聞いた時は流石に焦ったぞ」
「そんな事を言って、本当はあまり心配していないんでしょ?」
「そんな事はないさ、今回は流石に驚いたぞ」
「もう、口ばっかりなんだから」
炊き出しの翌日、僕達は宮殿に呼ばれました。
参加者は、僕とお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様です。
メインは間近に迫ってきた宣誓式の事だけど、昨日の炊き出しで起きた事も話題となった。
しかし、アルス兄様とステラさんの話を聞く限り、ただイチャイチャしているだけに見えるよ。
僕だけでなく、スカーレット姉様とリリアン姉様もアルス兄様とステラさんをジト目で見ています。
「ティナは何もなかったか?」
「はい、私は人々の治療をしていただけですので」
「そうか、それは良かった」
うーん、カーター兄様とティナさんもイチャイチャしている様に見えるぞ。
お母さんは、カーター兄様とティナさんを微笑ましく見ています。
でも話が進まないので、ここは話を宣誓式の事に切り替えないと。
という事で、僕達の視線に気がついたカーター兄様が、コホンと言ってから宣誓式の話を始めます。
「宣誓式は一週間後に行う。メインは兄上の王位宣誓だ。まあ、勲章の叙勲もあるが、王位宣誓が終わった後に行う予定だ」
宣誓式のスケジュールは、前に聞いたものと特に変更はない。
宣誓式が終わったら、孤児院の皆の叙勲が行われるます。
「クロノの事も改めて街の人に紹介するが、既に多くの人に知られているからな」
「そうですね。弟殿下って言って、可愛がってくれています」
僕の場合は炊き出しとかで多くの街の人と会っているので、幸いにしてそこそこ知名度はある。
これからも街の人の前には出たいと思っているし、僕自身も街の人との交流は好きなんだよね。
「こんな感じだ。警備の都合もあるので、出来る限り時間は短くしようと思っている」
「街の人にとっても、その方が良いですね。長時間拘束するのも悪いですし」
宣誓式は二時間もかからない予定だ。
なのでお昼前には全部終わるので、そのまま宮殿に皆で向かう予定です。
「街の人も今の王族には好意的だし、私もそこまで緊張しなくて良さそうだ。これもクロノのお陰だ」
「僕は出来ることをやっただけなので、全然大丈夫ですよ」
アルス兄様からも褒められたけど、僕としては特別な事はしたつもりはないんだよね。
そして、話はあの元王妃が出た公爵家の事になった。
「公爵家が兵を集めているのは間違いない。たが、こちらも既に準備万端だ。クロノ達のお陰で、奴らの王都での策略も止める事が出来ている」
「孤児院の皆のお陰です。宮殿でも良くない人を捕えていましたけど、これもライラちゃんのお陰ですし」
「本当にそうだな。クロノは周りの人にとても恵まれているな」
孤児院の皆はとても良い人だし、マーサさんも孤児院の出身だ。
僕は生まれた直後に元王妃と元宰相の企みで森に捨てられたけど、その後は周りの人に恵まれているね。
「当たり前だが、当日は厳重警戒をする。宣誓式を狙って、公爵家が何かをしてくる可能性が高いからな」
「王族が勢揃いしますし、目標にされやすいですしね。僕も十分に気をつけます」
僕達の護衛には近衛騎士が付くし、全員がライラちゃんとララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんのチェック済みだ。
知り合いの人でガッチリ周りを固めてくれるのは、僕達にとってもとても安心です。
こんな感じで宣誓式に向けての話し合いは終わりです。
因みに宣誓式まで一週間あるけど、僕達はいつも通りにポーションを作ったり炊き出しをしたりします。
特別な事はしないで、いつも通りに過ごす予定です。