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第七十二話 宮殿での初めての宿泊

 アルス兄様とカーター兄様との面会の後は、夕食も一緒に食べる事になった。

 更には宮殿の僕達の部屋に宿泊する事にもなった。

 僕も、宮殿の自室に宿泊するのは初めてだ。

 何だか僕も、ちょっとワクワクしています。


「「「わあ!」」」


 王族専用の食堂に案内されると既に豪華な食事が用意されていて、皆は感嘆の声を出していた。

 僕もこんなに豪華な食事は初めて見たぞ。


「今日は皆に紹介したい人もいるのでな」

「それで少し豪華な食事にしたんだよ」

「「「あー、成程」」」


 アルス兄様とカーター兄様の言葉に、何故かお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様がニヤニヤとしていた。

 どうやらお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様は、アルス兄様とカーター兄様の紹介したい人が誰だか分かっている様だ。


「では、入ってくれ」

「「はい」」


 アルス兄様が声をかけると、食堂の奥の所から二人の女性が入ってきた。

 質の良いドレスを着ているのを見ると、貴族のお嬢様って感じだ。


「紹介しよう。ステラとティナだ」

「ステラは兄上の、ティナは私の婚約者になる予定だ。宣誓式の際に発表をする」

「「「えー!」」」


 目の前に現れた女性が、まさかアルス兄様とカーター兄様の婚約予定者だとは。

 というか、予定って言っていたけどお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様の反応を見る限り、ほぼ婚約者になるのは決定なんだろうな。


「皆様、初めまして。ステラと申しますわ。どうぞ宜しくお願いします」

「ステラは私と同じ歳だ。昔からの幼馴染でな、軍務卿が出ている侯爵家の出身だ」


 アルス兄様がステラさんの隣に立って紹介をしていた。

 ステラさんはアルス兄様と同じ位に背が高く、燃えるような赤い紙をポニーテールにしている。

 何か武術をやっているのか背も真っ直ぐ伸びていて、スタイルも抜群だ。

 

「私はティナと申します。宜しくお願いします」

「ティナは私の一つ下だ。現在の内務卿の孫娘で、伯爵家の出身となる」


 ティナさんは、大人しい感じで濃い紫のおかっぱだった。

 背も小さくてスレンダーな体格だ。

 僕達も順に自己紹介を行った。

 そして、夕食が始まります。


「おねーちゃんは、あるすにーにとかーたーにーにのおよめさん?」

「可愛らしいお嬢ちゃんですわ。そうですよ、私はアルス様のお嫁さんになりますわ」

「私もカーター様のお嫁さんになりますよ」


 ステラさんとティナさん間にはゴードンお兄ちゃんが座っていて、ティナさんの隣にはライラちゃんが座っています。

 どうもステラさんとティナさんは可愛いものが好きな様で、ぬいぐるみみたいなゴードンお兄ちゃんをもふもふしながらライラちゃんとお話ししています。

 馬車の中からずっともふもふされっぱなしのゴードンお兄ちゃんは、流石に少し疲れてしまった様だ。


「お母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様はたまに宮殿に行っていましたが、もしかしてこの事で話し合いをしていたんですか?」

「うーん。これだけではないけど、婚約の件も会議内容の一つね」

「私としては、ようやくかって感じだね」

「私も。昔からずっと一緒だったね」


 他にも会議内容はある様だけど、国王陛下の婚約者イコール王妃であるのだから重要会議の議題の一つであるには間違いない。

 前王妃がとんでもない政治を行ったので、王妃候補は慎重に選ばれたはずだ。

 とはいえ、ステラさんはとっても良い人だし、ライラちゃんも懐いているということは少なくとも悪意のある人ではない。

 ティナさんについても、きっと同じ評価なんだろうな。


 夕食も終わってそれぞれの部屋に分かれて就寝なのですが、ちょっとトラブルが。


「すやすや」

「ゴードンちゃんは、このまま私と一緒のお部屋ね」

「らいらもいっしょ!」

「「「えー!」」」


 皆にもふもふされて疲れてしまったのか、夕食が終わるとゴードンお兄ちゃんは夢の中へ。

 すると、お母さんが寝てしまったゴードンお兄ちゃんを抱っこして、ライラちゃんと共に自室に向かってしまったのだ。

 ゴードンお兄ちゃんと一緒に寝る気満々だった女性陣は、お母さんの早業に非難の声を上げる事しかできなかった。

 しかし、ライラちゃんの危機察知能力は凄いなあ。

 しれっとお母さんの後をついて行ったよ。

 僕は次のターゲットにされかけたけど、ゴレスお兄ちゃんと一緒に寝るので騒動から回避できた。

 五歳児の僕や六歳児のゴードンお兄ちゃんが一緒に寝るのならともかくとして、流石に成人間際のゴレスお兄ちゃんと一緒に寝るのはまずいでしょうという事になった。

 色々とあった一日だったけど、何とかゆっくり眠れそうだ。

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