第七十一話 孤児院のみんなとアルス兄様とカーター兄様の面会
アンナお姉ちゃんとゴレスお兄ちゃんとララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんの街の巡回は順調で、不審者を次々と捕まえていった。
元々僕達と一緒に炊き出しをしているのもあってアンナお姉ちゃん達は街の人に顔も知られていて、次々と不審者を発見するのもあってちょっとした街の有名人になりつつあった。
そんな中、アルス兄様とカーター兄様から、僕とお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様だけでなく孤児院のメンバーの全員も宮殿に来てくれと話があった。
夕方になって巡回班が帰ってきた所で、皆で馬車に乗って宮殿に向かいます。
流石に人数が多いので、二台の馬車で宮殿に向かう事に。
折角だという事なので、孤児院のメンバーは騎士服を着ていく事になりました。
「一体、何で僕達が呼ばれたのかな?」
「悪い事ではないのよ。皆が活躍しているから、一度会いたいんだって」
「そーなんだ!」
僕の疑問に、隣に座っているお母さんが答えてくれます。
悪い事ではないので、僕もライラちゃんも一安心です。
僕の乗る馬車には僕とお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様に加えて、マーサさんとライラちゃんとゴードンお兄ちゃんが乗っています。
因みに、リリスさんとフルールさんはアンナお姉ちゃん達の馬車に乗っています。
ライラちゃんはお母さんに抱っこされていて、ゴードンお兄ちゃんは両側に座ったスカーレット姉様とリリアン姉様にもふもふされています。
一ヶ月以上一緒に暮らしているので、スカーレット姉様とリリアン姉様もゴードンお兄ちゃんが嫌がらない様にもふもふしています。
ゴードンお兄ちゃんは、何だか諦めの境地に辿り着いた表情をしていますが。
「「わあ、大きい!」」
そして宮殿に着いたんだけど、ゴードンお兄ちゃんとライラちゃんがびっくりした声を上げていた。
そうか、孤児院のメンバーが宮殿に入るのは初めてなのか。
馬車から降りると、別の馬車に乗っていたアンナお姉ちゃん達もびっくりした表情で宮殿を見上げていた。
やっぱり宮殿はとても大きいよね。
そして僕達は、アルス兄様の執務室に向かう事に。
「おお、ひろーい!」
「ライラちゃんは本当に元気ね」
ライラちゃんは、興味深そうに廊下をパタパタと飛んでいます。
楽しそうなライラちゃんの様子を見て、アンナお姉ちゃん達の緊張も解れた様だ。
そんな和やかな中で、アルス兄様の執務室に到着。
部屋に入るとアルス兄様とカーター兄様が書類整理をしていたので、僕達はソファーに座って待つ事に。
流石に国王陛下がいるとあって、アンナお姉ちゃん達も緊張していた。
出された紅茶にも手をつけないでいた。
「あのひとが、クロノにーにのにーに? もぐもぐ」
「そうだよ、アルス兄様とカーター兄様だよ」
「もぐもぐ、そうなんだ! もぐもぐ」
ライラちゃんだけは、出されていたお菓子を食べながらキョロキョロと部屋を見回していた。
僕がライラちゃんの相手をしてあげていると、アルス兄様とカーター兄様の仕事が終わった様でこちらにやってきた。
「待たせたな。楽にしてくれ」
「とは言っても、流石に緊張するか」
ガチガチのアンナお姉ちゃん達を見たアルス兄様とカーター兄様は、少し苦笑しながら僕達に話しかけてきた。
「私はアルスだ。この国の国王をしているが、クロノの兄でもある。本当にクロノが世話になった」
「そして、私がカーターだ。クロノの兄でスカーレットとリリアンの兄でもある。クロノだけでなく妹も世話になった」
アルス兄様とカーター兄様が挨拶をしながら、僕達に頭を下げてきた。
国王陛下と殿下に頭を下げられて、アンナお姉ちゃんとゴレスお兄ちゃんが慌てて立ち上がった。
「で、殿下、顔を上げて下さい。私達は当然の事をしたまでです」
「そ、そうですよ。兄弟なんだから、面倒を見るの当たり前です」
アンナお姉ちゃんとゴレスお兄ちゃんが話しかけた所で、アルス兄様とカーター兄様が顔を上げて椅子に座った。
そして、今度はアンナお姉ちゃんから順にお母さんに習った礼儀作法と共に挨拶をしていった。
「あるすにーにとかーたーにーには、くろのにーににそっくり!」
「そうか、それは嬉しいな」
「血の繋がった兄弟だけど、似ていない事もあるからな」
ライラちゃんが僕とアルス兄様とカーター兄様がそっくりだと言うと、アルス兄様とカーター兄様も思わず笑顔になった。
顔つきや髪色は違うけど、兄弟だから似ている所があるんだね。
「ポーションの事といい不審者の捕縛といい、皆には本当に世話になった」
「宣誓式が終わった後だが、皆には勲章を授与する事になった」
「あら、それは良い事ね。皆それだけの功績は上げているから、私としても大賛成よ」
「「「えー!」」」
「やったー!」
アルス兄様とカーター兄様が皆に勲章を授与すると言っているけど、僕もお母さんと同じく妥当だと思うな。
皆はびっくりしていたけど、ライラちゃんだけは両手を上げて喜んでいた。