第六十八話 新たな勉強の開始
国民向けの王位宣誓まで、あと二週間ほどになった。
僕はお母さんやスカーレット姉様とリリアン姉様と共に、時々宮殿で打ち合わせなどに参加する様になった。
とはいっても、挨拶をするタイミングや立ち位置を確認するくらいだ。
なので、そこまで面倒くさい事はない。
服も謁見の間で着た服を改造するので、新調する予定は無い。
今の所、準備は順調に進んでいます。
そして、丁度いいタイミングという事で僕は新たな勉強をする事になりました。
カッポカッポ。
「よっと」
「上手に乗れているわよ」
「ヒヒーン」
僕は屋敷の庭で、ポニーに乗っています。
今回の国民向けの王位宣誓では僕も含め王族全員が馬車に乗るので、直接乗馬をする事はない。
でも、これから馬に乗る機会も増えるだろうという事で、乗馬の練習をする事になりました。
でも僕はまだ小さいから、馬ではなくポニーで乗馬の訓練を行っています。
ポニーはブチ柄の女の子でとっても大人しく、皆からはブチさんと言われています。
「ブチさんはとても賢いですね。止まってと指示したら、ちゃんと止まってくれます」
「ブルル」
「おお、ブチさんが任せてって言っているよ」
「あらあら、この子はとっても賢いわね」
まだ人が手綱を持ってくれているけど、歩くだけなら僕だけでも何とかなりそうだ。
そして動物とお話ができるライラちゃんが、ブチさんの言葉を翻訳してくれた。
お母さんも、指示を受けて軽快に動くブチさんの賢さを誉めていた。
「リリアン姉様は、とても上手に乗れていますね」
「乗馬は貴族にとっては必須スキルみたいだからね」
僕からスカーレット姉様にチェンジして、今はリリアン姉様がブチさんに乗っています。
スカーレット姉様とリリアン姉様は乗馬の経験があるので、とっても上手にブチさんに乗っています。
「おーおー、うごいた!」
「落ちない様に気をつけてね」
「はーい」
「ブルル」
せっかくという事で、ライラちゃんもブチさんに乗っています。
ライラちゃんも器用にブチさんに乗っていて、ブチさんもゆっくりと歩いています。
こうして今日の乗馬訓練は終了です。
これから時間が出来れば、ブチさんだけでなく他の馬にもキチンと乗れる様に訓練をしていきます。
「戻りました」
「お帰りなさい、上手に乗馬できましたか?」
「はい、とても賢いポニーだったので何とか乗れました」
離れの工房兼臨時の薬師ギルドに入ると、エミリアさんが出迎えてくれた。
工房内は多くの人が集まっていて、ポーションも沢山作られていた。
治療研究所で働く予定の人が手伝ってくれているけど、僕達のポーションの作りを見て感心しているという。
「新しい魔導具の調子はどうですか?」
「とても良いです。お陰で、誰もが良質なポーションを作れています。毒消しポーションも作成が始まりました」
エミリアさんが新たな魔力計測装置を導入してくれて、更に精度の高いポーションが作れる様になった。
毒消しポーションも量産開始となり、街への供給が始まっている。
残念ながら、強力な毒消しポーションは僕達が魔力感知をしながらでないと作れない。
この辺りは、これから詳しく検証しないとね。
「街の薬屋との連携は進んでいますか?」
「はい、街の薬屋も好意的に受け止めております。寧ろ、以前よりも取引先が増えております」
「とても良い事ですね。まだお金の循環が少ないですが、これから市中にお金が回れば少しは皆の暮らしもよくなりますね」
取引先が増えているのは、とてもありがたい事だ。
市中のお金の流れはまだまだだけど、少しでも人々の暮らしが良くなれば良いな。
と、ここでシエラさんが離れの中に入ってきた。
今日は市中を回ってくれていたのだ。
「シエラさん、お帰りなさい」
「只今戻りました。薬草を納入してくれる所が増えそうです」
「ありがとうございます。適正価格で買取する様にお願いします」
もう冒険者ギルドから納品される薬草ではポーションを作るのに足らなくなってきたので、薬草の納入先の開拓をしてもらっていたのだ。
納入先の開拓も順調で、今ではポーションも順調に増産できている。
「最近は、この離れも手狭になってきましたね。でも、旧公爵領の混乱が収まるまでは下手に動けませんね」
「宣誓式が終わっても、暫くは混乱している可能性がありますから。今は、準備だけ進めておく位しかできません」
旧公爵領の混乱が収まるまでは、王都でも何が起きるか全く分からない。
離れは屋敷の中にあるので、門兵と塀によって安全が確保されている。
今は下手に行動を起こさない方が良いだろうな。