第六十七話 僕達の新たな目標
僕とエミリアさんとカルメンさんは、馬車に乗って宮殿から屋敷に向かいます。
エミリアさんは一回屋敷に行っているし、カルメンさんは炊き出しの際に皆と話をしている。
改めて顔合わせしなくても何も問題ないという事で、屋敷に着いたら早速離れに向かって皆と合流します。
「クロちゃん、突き飛ばされたって聞いたけど大丈夫?」
「ハゲオヤジに何かされたされたって?」
「弟君、怪我しなかった?」
「わあ!」
離れに入ると、アンナお姉ちゃんとスカーレット姉様とリリアン姉様が僕に心配そうな声を掛けながら駆け寄ってきた。
そして僕の体をペタペタと触ったり、顔や頭を触ったりしていた。
お母さんとマーサさんとエミリアが一回屋敷に戻っているから、その時に薬師ギルドであった事を話したんだ。
よく見ると、他の人もだいぶ僕の事を心配していた。
「紙を丸めたのを投げられたり尻餅をついただけだから、もう大丈夫だよ」
「しかし、ギルドの幹部もバカな事をしたな。こんな豪華な服を着ていれば、少なくとも貴族の子どもだってわかるはずだぞ」
「薬師ギルドの幹部は全く分かっていませんでした。というか、騎士や兵などにも最初は気がついていませんでした」
僕が苦笑しながら話をしても、ゴレスお兄ちゃんとマーサさんが愚痴を溢していた。
え、えーと、何とか話を変えないと。
「さっきの会議の話をしますね。えっと、いいですか?」
「「「いーよ」」」
僕は何故かマーサさんに抱っこされた状態で、椅子に座っています。
僕の隣にはライラちゃんも座っていて、僕の手を握っています。
そして、何故かゴードンお兄ちゃんは、エミリアさんに抱っこされながらもふもふされています。
まあ、エミリアさんのもふもふはしつこくないし、ゴードンお兄ちゃんもエミリアさんの事情を知っているから大人しくしています。
「先ずは、旧薬師ギルドは解散して僕が新たなギルドマスターの薬師ギルドが立ち上がりました。エミリアさんも一緒に補助してくれます」
「やっぱりね。特に驚く事はなかったわ」
「だねー」
先ずは僕が薬師ギルドマスターになったと言ったけど、ふーんと言った感じでドリーお姉ちゃんのいう通り誰もびっくりしなかった。
エミリアさんが屋敷に滞在する事も皆知っているし、やっぱりねって感じだった。
「それで、捕まった薬師ギルドの幹部が旧公爵領に逃げて、反乱の手助けをしようと計画しているのが分かったの。だから、万が一に備えてポーションをもっと増産する事になったんだ」
「おお、クロノを突き飛ばしたアホは、そんなバカな事を考えていたんだな」
「そんな事が起きているんなら、急いで動き出さないとね」
「私達も、頑張ってお手伝いします!」
そして、ポーション増産の件を話すと皆やる気を見せてくれた。
ついでと言わんばかりに、旧薬師ギルドの幹部をボロクソに言っていた。
僕の事を突き飛ばしたり丸めた紙を投げつけたりした事に、よっぽど恨みを持っている様だ。
「治療研究所の職員も、ポーション作りの勉強の為に交代でくる事になったよ。丁度魔力計測の魔導具も使えるって聞いたし、細かい設定値を設定させよう」
「後は、元々薬師ギルドに薬草を納入してくれた人にも声を掛けてみます。冒険者ギルドから納入される薬草よりも品質は悪い可能性はありますが、無いよりかは良いかと思います」
そして、カルメンさんとエミリアさんからも提案があったので、有り難く受ける事にした。
とりあえず話はこんなもんでいいかな?
ここで、宮殿からお母さんが帰ってきた様で、離れに入ってきた。
「あら、丁度話が纏まった様ね。じゃあ、エミリアさんの歓迎を兼ねながら昼食にしましょうね」
「「「やったー!」」」
そして昼食の話をすると、どちらかというとライラちゃんとララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんが飛び上がって喜んでいた。
歓迎会を兼ねているから、きっとご馳走が出てくると思っているんだろうな。
まあご馳走になる可能性は高そうなので、皆で屋敷に移動したのだった。