第五十七話 新しく来たお姉さん達
今日薬師ギルドから屋敷に来る人は全部で三人で、全員女性だという。
「なんでも薬師ギルドの再編中に過剰人員が出たらしくてね。ポーションを作った事のない事務員さんらしいけど、うちなら大丈夫だという事になったのよ」
「確かにポーションの出来るタイミングはまだ無理だけど、その他の工程や生産管理とかをお願い出来るね」
「うちは基本薬草があったら全部ポーションにするスタイルだったから、生産管理をしてくれる人がいると良いわね」
皆が応接室で薬師ギルドから来る人を待っている間、僕とドリーお姉ちゃんはお互いの感想をいっていた。
それにしても、王都の薬師ギルドが正常に動く様になるにはもう少し時間がかかりそうだな。
コンコン。
「はい、どうぞ」
「皆様、薬師ギルドから人が来られました」
「「「失礼します」」」
侍従が部屋をノックしたのでお母さんが返事を返すと、三人の女性を連れてきた。
全員人族で、とっても若く見える。
しかもとってもスタイルが良くて美人だ。
実は三人はたまたま美人だった訳ではなく、あえて美人だからこそ薬師ギルドに就職できたらしい。
お母さんが、裏事情を話してくれた。
「実はね三人はまだ薬師ギルドに就職して僅かなんだけど、薬師ギルドが宰相への賄賂として採用したらしいのよ」
「「「はっ?」」」
お母さんの説明に、僕達は全員頭にはてなマークが沢山出てしまった。
お姉さん達が宰相の賄賂って、一体どういう事なんだ?
「実はね、薬師ギルドは王妃や宰相への賄賂を捻出するだけの資金が不足していたのよ。それで思いついたのが、有力者へ愛人を贈ることね」
「「「えー! 酷いよ!」」」
「私も、この事を初めて聞いた時はとても怒ったわ。彼女達は、本当に真面目に仕事をしようと思っていたのにね」
お母さんの更なる説明に、特に女性陣が怒りを見せていた。
一方のゴレスお兄ちゃんは、薬師ギルドのやり方にかなり呆れた表情をしている。
でも、そんな馬鹿な理由で薬師ギルドに採用されたとなれば、例えお姉ちゃん達が悪くなくても薬師ギルドに残るのは難しいよね。
「クロノもこれからは公務が忙しくなるし、ポーション作りに専念出来る訳ではない。タイミング的にもちょうど良かったのよ。因みに彼女達は薬師ギルドの寮に住んでいたから、離れの二階に住んでもらう事になったわ」
離れの二階は四部屋の個室があるから、寝泊まりする分には全く問題ない。
食事やお風呂は屋敷でするそうです。
という事で、お互いに自己紹介です。
「私はサーニャと申します。この度はありがとうございます」
サーニャさんは、赤いロングヘアをポニーテールにしている。
しっかりとした感じのお姉さんです。
「シエラと言います。これから頑張って、仕事を覚えていきます」
シエラさんは、金髪のふわふわとしたロングヘアだ。
優しそうなお姉さんです。
「ステファニーと言います。どうぞ、よろしくお願いします」
ステファニーさんは緑色のロングヘアで、眼鏡をかけている。
真面目そうなお姉さんです。
しかし、全員がスタイル抜群だけでなく、ロングヘアなのか。
ロングヘアは、絶対に宰相の趣味なんだろうな。
「初めまして、クロノと言います。これからよろしくお願いします」
「「「クロノ殿下、よろしくお願いします」」」
そして三人は、僕とお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様の事も知っていて、孤児院のメンバーも知っていた。
特に隠す様な事はないもんね。
「それでは、先に荷物を置いてきましょう。それから、仕事について話をしましょうね」
「「「はい」」」
ここからは、大人であるお母さんが話を進めます。
マーサさんやリリスさんにフルールさんも三人と一緒について行って、部屋の案内をしています。
その間は、僕達は一階のポーション作りの工房に集まっています。
「可哀想な扱いをされた人なんですね。僕も出来るだけ気にする様にしておきます」
「そうだな。同じ男として、何だか申し訳ない事になっていたもんな」
「綺麗だと、そんな事に巻き込まれてしまうんだね」
僕を含めた男三人は、お姉さん達の置かれた状況を聞いてかなり複雑な気分だった。
宰相の女好きは、こんな所まで影響していたんだ。
「優しそうなお姉さんだったね」
「確か、全員成人していたんだよね」
「色々と話を聞いてみたいな」
「らいら、楽しみ!」
それに対して、ライラちゃんを含めた女性陣はワイワイとこれからの事を話していた。
やはり女性がいっぱい集まれば姦しいのは、どの世界でも共通らしい。