第五十六話 不穏な兆候
そんなこんなで国民向けの宣誓までの間、僕は炊き出しと勉強を続けていた。
のだが、ここに来て少し不穏な情報が入ってきた。
「反乱、の兆候ですか?」
「ああ。まあ、予想はついていたがな」
宮殿に呼ばれた僕とお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様は、アルス兄様とカーター兄様から話を聞いていた。
「改易される元王妃出身である公爵領と、その周辺領地だ。改易に反発して何かをしでかすと思っていたんだけど、奴らが武器を集めている情報が出てきた」
「屋敷をこちらに開け渡す事もなく、未だに抵抗していたからな」
アルス兄様とカーター兄様の話を聞いて、僕も何となく状況を理解した。
改易になり全てを失うのが確定しているので、悪あがきをしたいのだろう。
「出来るだけ血を流したくなかったのだが、こればかりはどうしようもない」
「せめて反乱の規模を少なくする為に、内部工作を進めているがな」
「そうね。領民の被害は可能な限り少なくしたいし、こちら側も被害が少ない様にしたいわね」
アルス兄様とカーター兄様の悩みに、お母さんが共感していた。
戦争には、多くの人が動員されて殺し合いが行われるからな。
「出来るだけ被害が少なくて済む様に、こちらも出来る限りの事をする。クロノには悪いが、ポーションを出来るだけ多く作ってくれるとありがたい」
「分かりました。敵も味方も多くの人が助かるように、僕も頑張ります」
「クロノには負担をかけてすまない。王都の炊き出しの効果がとても大きいのも、クロノのおかげだ」
アルス兄様とカーター兄様の依頼で、僕はポーションの増産をする事にした。
僕がするのは、反乱で傷ついた人を一人でも多く助けるためだ。
決して人殺しを手伝うわけではない。
「最悪の場合、クロノには後方支援部隊として医療対応にあたって貰う可能性もある」
「大丈夫です。少しでも皆さんの力になりたいです」
「私も手伝うよ」
「私も!」
カーター兄様の万が一の要請にも、僕は参加する気でいる。
スカーレット姉様とリリアン姉様も、後方支援部隊を手伝う事に賛成していた。
とはいえ、今僕がやらないといけない事は、ポーションの増産だ。
早速屋敷に戻って、皆に色々と話す事にした。
「ということで、地方で困っている人を救う為にもう少しポーションを増やせないかって言われたのよ」
「それなら、私達も頑張らないとね」
ちなみに反乱の事は未だ内密で皆に詳しく伝える事ができないので、お母さんが人助けをする為にポーションを増産する事だと説明してくれた。
実際に地方ではポーションが足りないところがあるので、反乱とは全く関係ない地方の領地にはポーションが送られる事になっている。
本格的にポーションを増産する時には、兄様からの命令書が届く事になっている。
あくまでも、国からの指示でポーションを増産するという証拠にする為です。
「バンザスの街から定期的に薬草が届けられているし、もう少し生産量は増やせるわ」
「よし、じゃあ午後は沢山の瓶を洗っておくか」
ドリーお姉ちゃんとゴレスお兄ちゃんが、早速やる気を見せてくれた。
僕も頑張ってポーションを作ろう。
と、ここでアンナお姉ちゃんとお母さんが僕に話しかけてきた。
「あ、クロノには言ってなかったかも知れないけど、今日の午後から薬師ギルドの職員が数名屋敷に来る事になったのよ」
「そっか、クロノがちょうど宮殿に行っている最中の話だったわね。私も直接会ったけど、とても良い人だったわ」
「らいらもあったよー!」
悪意に敏感なライラちゃんが特に何も言わないから、きっと問題ない人なのだろう。
どんな人がやってくるのか、ちょっと楽しみだな。




