第五十四話 バンザスの街の開発計画
と言うことで、早速次の日兄様から宮殿に来てほしいとあったので、僕とお母さんとスカーレット姉様とリリアン姉様で宮殿に向かいます。
だいぶ使ってしまったポーション作りは、ドリーお姉ちゃん達にお任せです。
「どうも王都を担当する役人にも不正があって、公共事業費の中抜きをしていた事が判明した。キチンと公共事業を行えば、ある程度の求職は賄えるだろう」
「それと併せて、軍の人員補強を行う。軍も不正者が出て人員不足気味だ」
アルス兄様とカーター兄様が、早速手を打ってくれた。
公共事業を行う事で、日給を得る人も増やす事ができる。
軍も人が不足している様だし、この際だから体制をキチンと整える様だ。
「そして、計画していた事を前倒しで進めよう」
「直轄地になった旧バンザス男爵領の開発だ」
「「開発?」」
アルス兄様とカーター兄様の話に、スカーレット姉様とリリアン姉様も何だろうって反応だ。
「王都は、スラム街をどうにかしないとこれ以上の発展はない。そこで目をつけたのが、直轄地となったバンザス男爵領だ」
「バンザス男爵領は、冒険者にとっても沢山の獲物が採れる良い場所だ。それに質の良い薬草も採れる。薬草と回復魔法の研究所と、冒険者向けの学校を建築する予定だ」
「確かに、バンザスの街は王都からも近いのに自然豊かですね。冒険者活動に影響のない程度に開発するのは、僕は有りだと思います」
バンザスの街は領主の放蕩経営のせいで段々と寂れていったから、賑わいが戻るのは僕としても賛成だ。
建設作業を行えば街の人にも仕事が行き渡るし、お店にもお客さんがやってくる。
空き家を上手く活用すれば、建設作業で訪れた人の宿泊場所も確保出来る。
とても有効な手立てだと思うな。
「バンザスの街の件は、計画を進めておこう。冒険者ギルドとの交渉もあるし、担当役人も選定する必要がある」
「国民向けの王位宣誓が終わったら、クロノも久々にバンザスの街を訪れるのも良いかもな」
「私もバンザスの街に行くよ!」
「弟君が育った街を見てみたいな」
王位の宣誓までは半月以上あるけど、何だか楽しみが増えてきたな。
屋敷に戻ってバンザスの街の話をしたら、皆もとても乗り気だった。
「確かに最近は街が少し寂しかったから、街に賑やかさが戻るのはとても良い事ね」
「それに、冒険者の為に森を荒らさないでくれるのは助かるな。流石はクロノの兄貴だ」
「ポーション開発の研究所が出来るなら、今以上に品質の良いポーションが作れるわね」
アンナお姉ちゃんもゴレスお兄ちゃんもドリーお姉ちゃんも、アルス兄様とカーター兄様の案に大賛成。
ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんも、街の人の為になると喜んでいた。
「恐らくバンザスの街を例にして、王都に近い場所に数ヶ所衛星都市を作ると思うわ。スラム街を壊して新たな街を作る為にも、人の受け皿が必要ね」
「となると、ますますバンザスの街の拡張は成功させないといけませんね」
お母さんは、アルス兄様とカーター兄様の考えの先まで読んでいた。
王都の再開発は大きな事業だし、それだけでも大きな雇用が発生する。
順に対応すれば、継続的に仕事を生み出す事も可能だ。
「やっぱり、貴族の為の政治が蔓延っていた影響は大きいですね」
「とはいえ、直ぐにどうこうはできないわ。少しずつ、着実に行わないとね。スカーレットもリリアンも、とても良い経験になるからしっかりと勉強しないと」
「「はい」」
こうして、少しずつだけど今までの対応からの脱却が始まった。
でも、僕はまだ幼いから、勉強とポーション作りと炊き出しを行う日々が続くことになる。