第五十三話 多くの難民
王妃と宰相の死は、国民向けには病死と発表された。
そして、多くの貴族が処罰された事も併せて発表された。
余りにも多くの貴族が処罰された事に住民にも動揺が広がっていったが、やがて少しずつ動揺は収まっていった。
「はい、どうぞ。熱いので気をつけて下さいね」
「おう、ありがとうな」
そんな中でも、僕達はポーションを作ったり炊き出しを行ったりしている。
僕に出来る事は限られているし、出来る事を着実にやっていこうと思っている。
今日は、以前話のあった街の南部で炊き出しを行っています。
「重税で生活する事ができず、生きる為に何とか王都に逃げてきました」
「そう、それは辛かったですわね」
お母さんが、領地から逃げてきたという女性から話を聞いています。
お母さんは女性の手を取って、真摯に女性の話に耳を傾けています。
そしてお母さんの傍らには、メモをとる若い男性の姿がありました。
ようやく炊き出し時に同行する役人が決定したので、数人の役人が炊き出しの現場に姿を見せています。
流石は役人というだけあって、僕達よりも的確に情報を分析しています。
「ふう、思ったよりも集まった人が多かったけど、何とかなったね」
「そうだな。こう言っちゃなんだが、毎回炊き出しに集まる人が多いな」
「私も人が多いなって思ったわ。それだけ、職に就けない人が多いのね」
今日の炊き出しも終わって、片付けをしながらアンナお姉ちゃんとゴレスお兄ちゃんとドリーお姉ちゃんが談笑をしている。
確かに、今日も炊き出しに並んでいる人はとても多かった。
これはかなり大変な事じゃないかなと、僕も思っていた。
すると、今度はお母さんと役人が少し深刻そうな表情で話をしていた。
恐らく、今日の炊き出し関係での話だろう。
「お母さん、何かあったの?」
「ええ。難民の話を纏めると、ある共通点があったのよ」
「共通点?」
「今回の難民は全て王妃の出身の公爵領と派閥関係ある貴族領地で、しかも国の規則を大幅に超えた重税を住民に課した様だわ」
お母さんと役人が難しい顔をするのも仕方ない。
新たに、頭を抱えたくなるほどの大きな問題が発覚したのだからだ。
「お母さん、確か公爵家は改易になるんじゃ?」
「そうね。沢山の悪事が見つかったので、王妃の件とは別に改易になるわ。今回は、改易とは別に新たな犯罪を犯していた事になるわ」
公爵家は王妃の威厳を傘にして、これまた犯罪を多数引き起こしていた。
逆らう貴族の殺害や、多くの贈収賄。
余りの罪状に、改易以外の方法があるかと言われた程だ。
そこに浮かび上がった新たな疑惑。
早速役人が宮殿に報告しに行っていた。
「お母さん、もしかしたら他の地域でも違法な重税が行われているかもしれないね」
「残念だけど、その可能性は高いわね。早めに難民キャンプを整備しないといけないわね」
もうお母さんは、最悪な事態を想定して動いている。
流石はお母さんだ。
でも、流石に今日一日でどうにかする事はできないので、今日は宮殿への報告までにする事にした。
うーん、困っている人をどうにかしてあげないと。
次から次へと、難題が見つかるぞ。