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第五十一話 宰相への判決

 午前の王妃の裁判が終わり、午後からは宰相の裁判となる。

 裁判が始まるまでまだ時間があるので、昼食を食べる事にした。


「「もぐもぐ……うーん」」


 僕達全員、中々食が進まないのだ。

 特にいつもは孤児院のメンバーと一緒になってもりもりと一杯食べるスカーレット姉様とリリアン姉様は特に食が進んでいなく、半分以上の食事を残していた。

 まあ午前中の王妃の裁判を見れば、食欲が無くなるのも良く分かる。

 

「今日は精神的にもキツいから大変だけど、無理をして食べる必要はないわ」

「「はい……」」


 お母さんからも無理をするなと言われて、スカーレット姉様とリリアン姉様はフォークを置いた。

 そんな二人の様子を見て、カーター兄様が二人に話しかけてきた。


「二人とも、体調がすぐれないのなら午後の裁判は欠席するか? 一応、二人にとって肉親に当たる人物でもあるのだから」


 午後の裁判の被告である宰相は、スカーレット姉様とリリアン姉様だけでなくカーター兄様にとっても実の祖父にあたる。

 だからこそ、カーター兄様はスカーレット姉様とリリアン姉様の苦悩も分かるのだろう。

 でも、スカーレット姉様とリリアン姉様の決意は固かった。


「裁判には出ます」

「身内だからこそ、結果を見届けないと」

「そうか、分かった。でも、無理はするなよ」


 スカーレット姉様とリリアン姉様がしっかりとカーター兄様の顔を見て話をしたので、カーター兄様もスカーレット姉様とリリアン姉様の頭を撫でながら席に戻った。

 お母さんとアルス兄様も、カーター兄様と顔を見合わせて頷いていた。

 スカーレット姉様とリリアン姉様は、きっと大丈夫だろうという判断なのだろう。

 

 そして、午後の裁判が始まった。


「被告ゴルゴン。帝国との裏取引については、帝国側でも捕縛が進んでいる。本件について証拠が固まった為、国家反逆罪が適用される」

「ふう、やれやれ。帝国の貴族も使えないものだな。こうもあっさりと捕まるとは」


 被告席のゴルゴンは、午前中の王妃と同じく髪が乱れ肌は煤けていた。

 そしてゴルゴンは、まるで他人事の様に裁判官の話を聞いていた。

 国家反逆罪というとんでもない犯罪を計画したのに、どうでも良いような感じだ。


「また、被告ゴルゴンは多数の愛人を作っていたが、妊娠が発覚すると自ら手を下していた。娘である王の側室が亡くなった際も、宮殿内で愛人を殺害していた事が分かっている」

「ふん、どうせ平民の娘だ。貴族の中の貴族に抱かれていたんだ、感謝する事だ」


 そして更に明らかになった、カーター兄様とスカーレット姉様とリリアン姉様の母親が亡くなった際の父としてあるまじき暴挙だ。

 お母さんは、涙を流しながら俯くスカーレット姉様とリリアン姉様を自身の胸元に抱いていた。

 僕も、黙り込んでしまったカーター兄様の手を握っていた。


「被告ゴルゴン、罪状に何か言う事はあるか?」

「今更何を言っても無駄だ。儂の犯した罪は、儂がよく分かっている」


 裁判官の問いかけに、宰相は王妃と違って罪をあっさりと認めていた。

 勾留中に、何か心境の変化があったのだろうか。


「被告は、自身の保身を判断基準として政治を行なっていた。疑心暗鬼で政治を行なった結果、自身に害を及ぼす可能性のある者を徹底的に排除する様になった」

「否定はしない。自分に害をなすものは、排除しなければならない。そうでなければ、権力を掌握する事もできない」


 この辺りの話は、独裁者によくある話だ。

 独裁者は小心者が多いって話を聞いた事がある。


「どの様な理由があれど、被告が起こした結果は重大である。主文、被告を死刑に処する」


 そして判決の瞬間、宰相は黙って目を瞑って判決を聞いていた。

 国家反逆罪だけでなく謁見の間でのアルス兄様殺害未遂だけでも、十分に死刑になるだけの要素がある。

 更には多くの殺人も犯している。

 死刑にならない方がおかしいレベルの罪の多さだ。


「被告人ゴルゴン。最後に何か言うことはあるか?」

「ない、もう尋問に疲れた。早く楽にしてくれ」


 宰相は、最後まで自分勝手だった。

 面倒くさい様に裁判官に話した後、兵によって被告席から連れ出された。

 僕達も少しして、傍聴席から退出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 悪人どもの裁判か。 どちらも最低だが、宰相の方は往生際はよかったな。 惨めに無様にもがく王妃、本当に見苦しい。
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