第五話 ギルドで僕の取扱いを決めます
「おーい、ギルドマスター。捨て子がいたぞ!」
「はあ? 昨年もくま獣人の子が捨てられていて、その前も別の種族の子どもが捨てられていたぞ」
大きい犬が僕がいた籠を見つけてからどれくらいたったのかな?
僕はギルドという施設に着いた。
因みに僕の入っている籠は、何故か大きな犬が咥えていた。
何だか大きな犬が、僕が見つけた物だから離さないって感じだ。
大きな犬が籠を咥えていた為か、またもや前後にぐわんぐわんと揺れてしまったので、僕はまたグロッキー状態になってしまった。
どうも周りの人の話では、僕の他にも捨て子がいたらしい。
もしかして景気が良くないのかな?
うーん、国の情勢が悪いのかもしれないぞ。
「あと、籠にこんな封筒が入っていた。何かこの子の手がかりが入っているかもな」
「個室に移動しよう。周りの人に聞かれるとまずい事が書いてあるかもしれないぞ」
ギルドマスターといういかつい顔の傷だらけの大男の提案で、僕も含めてギルドという建物の個室に移動した。
うーん、まだ少し頭がぐわんぐわんとしているが、別問題として何だかお腹が空いてきた気がするぞ。
「はあ、これは何ということか。我が子、クロノをよろしくと書いてあるぞ」
「おや? 他にも何か入っているぞ」
「これはペンダントだね。この紋章、見覚えがあるわ」
個室に移動して、皆が僕の籠に入っていたという封筒を見ています。
因みに僕は未だに籠の中で、籠が床に置かれていて大きな犬が護衛してくれています。
ギルドマスターという大男は母親からの手紙を読んでいたけど、一緒に入っていたというペンダントって何だろう?
「この紋章はこの前依頼を受けた事があるから分かるわ。ライングライド男爵の紋章よ」
「そっか、そういう事か。全てが繋がったぞ」
「繋がったって、ギルドマスター何か分かったのか?」
「ああ、ちょっとまずい事だ」
ちょっとまずい事って一体何だろう?
うーん、何だか話が良くない方向に向いてきたぞ。
そして、僕のお腹の空き具合もだいぶ良くないぞ。
「陛下が息子の教育係の女性を孕ませたって噂は知っているか?」
「知っているぞ。街でもかなりの噂になったな。女好きの放蕩王もそこまでいったとはってね」
「ああ。その教育係ってのが、ライングライド男爵出身って訳だ」
「じゃあ、その子って王子様って事?」
「間違い無いだろう。ここまで特徴的な金髪は王家以外あり得ない」
あの、とっても重い話になってきているんだけど。
僕の出生にそんな秘密があったなんて。
お母さんが陛下に襲われて、結果として生まれた子どもが僕なんだ。
となると、この前僕の前に現れた金髪と銀髪の兄って王子様なんだ。
だからお母さんが僕を森に捨てるという、色々と面倒な事になったのかな。
それだと、お母さんがとても可哀想だよ。
僕としては、グーグーなっているお腹の事の方が大事なんですけど。
「下手に男爵家にも伝える事はできねえな。二人の王子のどちらかを王位につけるという混乱は知っているが、その混乱に更に拍車をかける事になる」
「じゃあ、この子はどうするんだ?」
「手紙だけつけて、孤児院に預ける。ペンダントは俺が預かる。軍部にツテがあるから、それとなく情報を探ってみるわ」
「軍部は国の為に中立を保っているから、何か手がかりを得られるかも知れないね」
うーん、僕の事について色々と話をしているが、僕も空腹が限界だ。
頭が回らなくなってきたぞ。
という事で、失礼します。
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
こういう時は泣くに限る。
だって、今の僕は赤ちゃんだし。
すると、大人三人が僕の方に寄ってきた。
大きな犬も僕の事を見ているぞ。
相変わらずドアップなので、僕からは犬のお鼻しか見えないけど。
「お、盛大に泣いているな。腹が減ったのか?」
「そういえば、保護してから何も食べてないな」
「うちの子がまだ乳飲み子だから、母ちゃんに乳を分けて貰うわ」
ほっ、どうやら空腹は何とかなりそうだ。
やっぱり赤ちゃんだから、泣いて意思表示をしないと。
僕の事もとりあえずどうにかなりそうだし、そもそも赤ちゃんで動けないから暫くは大人しくしよう。
その間に、色々な事が動いてくれればいいな。
また、お母さんに会いたいな。