表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/125

第四十九話 役人が炊き出し現場に現れなかった理由

 そして次の炊き出しの日になった。

 今日はまた別の場所での炊き出しで、前回よりも多くの人が炊き出しに集まっています。


「もし次に炊き出しをするのなら、街の南側でやるのが良いかもしれないな」

「そうだな。他の領地から来た人が集まっているって、俺も聞いた事があるぞ」

「そうなんだ!」

「貴重なご意見、有難うございます。次回の炊き出しの場所を決める際に、参考にさせて頂きます」


 僕も炊き出しを配膳しながら街の人に話を聞くけど、高い税金を払えずに王都にやってくる人が後を絶たないそうだ。

 各領地の税金は上限を超えない限りは領主の裁量だから何とも言えないけど、そんなに税金を払えない人が多いのも問題だよな。

 そんな事を、今日も僕達が炊き出しに並んでいる人に聞いています。

 そうです、今日も前回と同じく役人が炊き出し現場に来ていません。


「あー、イライラする。何で誰も来ないんだよ」

「そうね、私が宮殿に乗り込む事も考えないと」


 ゴレスお兄ちゃんとアンナお姉ちゃんも役人が来ていない事にかなり苛立ちを隠しておらず、何だか不穏な事を口走っていた。


「流石に、二回連続で炊き出し現場に誰も来ないのは問題ね。今日の炊き出しが終わったら、宮殿に向かった方が良いわね」


 お母さんもちょっと問題だと思い始めたので、今日の炊き出し終了後に僕を連れて宮殿に向かう事が確定。

 因みにスカーレット姉様とリリアン姉様は、僕とお母さんと共に宮殿には向かいません。

 スカーレット姉様とリリアン姉様が役人が来ない事に対してかなり怒っているので、宮殿内で暴れない様にとのお母さんの配慮です。

 

 と言うことで、炊き出し終了後に一旦屋敷に戻ってから改めて宮殿に向かいます。


「うーん、役人が来なかったのはもしかして僕達が炊き出しを行う事を伝えられていなかったからかなあ?」

「それはないでしょう。護衛が来ているし、食料の手配も済んでいるのよ。となると、誰かがわざと役人を寄越さなかった可能性があるわ」


 僕の希望的観測を、お母さんが真っ向から否定した。

 うん、お母さんの表情はいつもと変わらずにニコニコしているけど、内心はめちゃくちゃ怒っているんだ。

 お母さんの笑顔が、その、ちょっと怖いな。


 そして馬車は宮殿に到着し、僕とお母さんは直ぐにカーター兄様の執務室に招かれました。

 アルス兄様は、今は別の対応中だという。


「失礼します、王太后様とクロノ殿下が来られました」

「入ってくれ」


 侍従の案内でカーター兄様の執務室に入った僕とお母さんは、カーター兄様の作業が終わるまでソファーに座って待っていた。


「わざわざ来てもらい、申し訳ない。炊き出しの事で、皆には迷惑をかけた様だ」


 ひとしきり書類を仕上げたカーター兄様は、僕達の座っている前に来ると頭を下げてきた。

 どうやらカーター兄様も、炊き出しの時に役人が来なかった事を把握している様だ。


「役人の上役が、下の者に現場に居ないのに居た様に書類を偽造する様に指示を出していたんだ」

「何で役人は、そんな直ぐにバレる様な嘘を付いたんですか?」

「これは、今まで王族や貴族が行っていた炊き出しのやり方に問題があったんだ」


 カーター兄様の話によると、今まで王族や貴族が炊き出しをしている事はあったそうだが、炊き出し現場に王族や貴族が出向く事はほぼ無かったらしい。

 なので、今回の炊き出しも僕達が現場に行く事はないと、役員は思っていた様だ。

 なので、現場にいたという偽造をしてもバレる事は無いと思っていたという。


「だが、二日とも皆が現場に行き、二日とも役人が現場に来る事はなかった。皆の護衛についていた者から報告があった時は、流石に申し訳ないと思ったよ」

「まあ、街の人の聞き込みは僕達にでもできるので、政策への実害はないのが幸いですね」


 とはいえ、上役の役人がやった事は職務怠慢どころではなく、書類の偽装や虚偽の命令まで含まれている。

 対象の上役の役員は、即刻職務を外されて沙汰が決まるまで謹慎処分になったという。


「王妃と宰相と結託をして腐敗政治を行っていた役人は可能な限り排除したが、そもそもの役人の考え方を改めないとならない。中々に難しい事だよ」

「いきなり全てを変えるのは難しいので、少しずつ変えていくしかないですね」


 僕はまだ幼いからアルス兄様とカーター兄様のお手伝いはできないけど、いつか大きくなったら国を良くする手伝いをしたいと思った。

 そして、直ぐに国の諸悪の根源である王妃と宰相の裁判が始まる。

 きっと大変な裁判になると思うけど、アルス兄様とカーター兄様には乗り越えて欲しいなと願っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ