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第四十八話 初めての炊き出し

 そして炊き出しの当日になり、皆でスラム近くの教会に移動します。

 安全の為と言う事で、移動は馬車を使います。


「「「おはようございます!」」

「はい、皆さんおはようございます」


 教会に着いた僕達を出迎えてくれたのは、年配のシスターだった。

 王子である僕と王女であるスカーレット姉様とリリアン姉様が炊き出しに参加するのはシスターも知っているけど、シスターも手伝いの人も特別扱いしてくれないのはありがたい。


「ではシスター、早速準備をしましょうか」

「はい、王太后様。お腹を空かせている子どもが沢山待っていますわ」


 お母さんとシスターが話をしているけど、沢山の人が教会前に集まっていた。

 なので、皆で力を併せて炊き出しの準備を行います。

 因みに、侍従のマーサさんとリリスさんとフルールさんも炊き出しを手伝ってくれます。


「おお、良い匂いがしてきたよ」

「美味しくできると良いね」


 ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんがマーサさん達が作っている炊き出しのスープの匂いを嗅いでいるけど、ポーションを準備している僕のところにも良い匂いが漂ってきた。


「おいちー!」

「そう、良かったわ。では、予定よりも早いけどスープを配りましょう」

「そうですね。ライラちゃんの美味しそうな顔を見て、並んでいる子ども達が我慢できなそうな顔をしています」


 味見をしたライラちゃんと羨ましそうに眺めているスラムの子ども達の顔を見て、お母さんとアンナお姉ちゃんは早速スープを配り始めた。

 

「はいはい、慌てないでね。スープは一杯ありますよ」

「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」


 スカーレット姉様とリリアン姉様も、並んでいる人にスープを配っている。

 スープを受け取った人は、大人も子どもも皆笑顔でスープを食べていた。


「どうですか?」

「おお、腰の痛いのが良くなったぞ」

「良かったです」


 そして治療班も準備が整ったので、治療をスタート。

 ドリーお姉ちゃんが沢山準備したポーションを使って、おじいさんの治療を行なっていた。

 ポーションもよく効いていて、僕も先ずは一安心。


「はーい、どーお?」

「おお、お嬢ちゃんの魔法は凄いなあ」

「えへへ」


 ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんと共に、ライラちゃんも魔法で色々な人の治療を行なっています。

 まだ小さいライラちゃんがニコニコとしながら回復魔法を使うので、ごっついおっちゃんも思わずライラちゃんの笑顔に釣られてニコニコなっています。


「そう、それは大変でしたね」

「ええ、夫が死んでから本当に生活が大変で」


 お母さんは女性から色々話を聞いていた。

 列を整理しているゴレスお兄ちゃんやゴードンお兄ちゃんも、時々列に並んでいる人から日々の困り事を聞いていた。

 別に僕達が人々の困り事を聞いても問題ないんだけど、少し問題が出ているのだ。


「うーん、遅いですね」

「ったく、なにやってるんだよ」


 僕は護衛に付いてくれている騎士と話をしているのだが、元々街の人の困り事を聞くのは役人のはずだった。

 なのに、一向に役人が炊き出し現場に顔を見せないのだ。

 流石に護衛の騎士も、姿を見せない役人に対して苛立ちを隠せていない。


 そして、役人が来ないままとうとう炊き出しは終了。

 文句を言っても仕方ないので、僕達で色々聞いた内容を紙に纏めていく。

 まあ、僕達にとってはポーション作りで使っている人から改良点を聞いているので、特に問題はない。


「王太后様、こんなに盛り上がった炊き出しは過去にありません。本当に助かりました」

「いえいえ、皆様の為になれば炊き出しを行った甲斐がありますわ」


 シスターとお母さんが感想を言っているけど、炊き出しとしては大成功だった。

 特に頑張っている弟王子とそれを支える双子の姉王女っていう構図が、人々の印象に強く残った様だ。

 

「本当に、役人は何をやっているのかしらね」

「クロノがこんなに頑張っているのに、なんで役人が来ないんだろうか」


 一方、とうとう役人が来なかった事にアンナお姉ちゃんとゴレスお兄ちゃんは相当憤慨していた。

 うーん、役人側でも何かあったのかな?

 明後日も別の場所で炊き出しをするから、改めて様子を見る事にしよう。

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