第四十六話 皆の環境の変化
早朝の訓練も終わり朝食も食べたので、ここからは午前中の勉強です。
「当分クロノは午前中は礼儀作法の勉強で、午後はポーション作りを行いましょう」
やはりというか、お母さんの一言で当面僕の午前中の勉強は礼儀作法が中心になる事が決定。
こればかりは仕方ないね。
「他の人は、普通の勉強の他に礼儀作法の勉強もやりましょう。今日は全員で礼儀作法の勉強ね」
「はーい」
空き部屋で礼儀作法の練習をするのだが、僕とスカーレット姉様とリリアン姉様は貴族式の礼儀作法を勉強し、他の人は挨拶の基本から勉強する事になった。
「らいらも、くろのにーにといたい!」
「じゃあ、基本の勉強が終わったらクロノと一緒に勉強しましょうね」
「うん!」
ライラちゃんのちょっとしたワガママも軽く流したお母さんは、僕とスカーレット姉様とリリアン姉様の礼儀作法の指導に入った。
「あら、クロノはそれなりに礼儀の基本が出来るのね」
「兄様が他の人に挨拶するのを見ていたので、何となくですけど」
「でも、体を曲げる角度やタイミングを直さないとね」
僕は兄様の見様見真似での礼儀から、お母さんにあれこれ直されている。
流石と言うのか、スカーレット姉様とリリアン姉様はいつもの明るい雰囲気とは違ってキリリとした表情で礼儀をしていた。
僕も頑張って、お披露目までに礼儀作法を覚えないといけないな。
さてさて、他の人はというと意外や意外、ゴレスお兄ちゃんはそれなりに礼儀作法が出来ていた。
「冒険者をしていると、依頼人と会う事があるからな。最低限の礼儀は必要って事だ」
「おおー!」
ライラちゃんはゴレスお兄ちゃんの礼儀作法に感嘆の声をあげていた。
ドヤ顔で僕達に語るゴレスお兄ちゃんだったが、ゴレスお兄ちゃんの背後からアンナお姉ちゃんがスタスタと近づいていった。
スコーン。
「あいた、何すんだよ!」
「あんたが馬鹿な事を言っているからでしょ? 礼儀作法が大切だって、誰に教わったの?」
ゴレスお兄ちゃんの頭を、アンナお姉ちゃんが後ろから思いっきり叩いていた。
まあ、これは仕方ないよね。
色々な人に挨拶するという意味ではララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんも同じだし、ゴードンお兄ちゃんもお店の人と挨拶をしている。
だからなのか、ゴレスお兄ちゃん以外の人も普通に礼儀作法が出来ていた。
「じゃあ、ゴレスくんには騎士式の礼儀作法も勉強して貰いましょう。炊き出しの時とかに、クロノを護衛する事もあるだろうしね」
「母上、それは良い案ですね。私も是非勉強させて下さい」
お母さんの提案に、アンナお姉ちゃんも賛成している。
しかし、当のゴレスお兄ちゃんは、何だか考え込んでいた。
「ゴレス、あんたボーッとしてどうしたの?」
「いやな、俺はクロノの兄貴分だと思っているから、クロノの為になるなら新しい礼儀作法を覚えるのも良いんだ。だけど、やっぱりクロノは王子様だって思っただけだよ」
「そうね。だからと言って、あんたがどうこうする事はないのよ。あんたはクロちゃんの兄貴として、どーんと構えていれば良いのよ」
僕がこの国の王子様だと分かってから、孤児院の家族にも変化がやってきた。
でも、アンナお姉ちゃんの言う通りゴレスお兄ちゃんはこれからも僕のお兄ちゃんだし、僕も絆まで変わるとは思ってない。
「じゃあ、午前中はここまでにして昼食にしましょう」
「「「はーい」」」
僕はまだまだ子どもだし、覚える事が沢山ある。
頑張って色々覚えよう。