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第四話 森の中での遭遇

「うーん、これから僕は一体どうなるのだろうか……」


 目が覚めてからどれくらいたったのだろうか。

 僕は、お母さんからお乳を貰ってお腹いっぱいになって寝てしまっていた。

 勿論、これは赤ちゃんだから当たり前の事だ。

 今、僕の目の前で起きているのは当たり前ではない事だった。

 辺りを見渡すと、今までお母さんと一緒だった部屋ではなくうっそうとした森の中だった。

 周りに誰もいないのは何となく分かった。

 草が風でカサカサする音以外、何もしていないのだから。

 勿論、お母さんもお母さんと一緒にいたメイド服を着ていた女性もいない。


 僕は昨晩お母さんの悲しい声を聞いていた。

 僕を森に捨てなければならないと、そして実際に捨てられしまったのだ。

 どうも僕がすやすやと寝てる間に捨てられてしまって、捨てられた時の状況が全く分からないぞ。


「このまま、僕は死んじゃうのかな……」


 先程から更に時間がたった。

 傍目には赤ちゃんがあうあうと言っているだけだろうが、反応するものは何もない。

 前世で生まれて捨てられたのは病院だったけど、今回は森の中だ。

 幸いにして暑すぎたり寒すぎたりしてはいないが、このままでは餓死する事は間違いない。


 ガサガサ。


「うん? 何だろう?」


 不意に近くの茂みが、ガサガサしているのに気がついた。

 もしかして誰か来たのかな?

 助けに来たのかな?

 僕はそんな淡い期待を持っていた。

 お母さんが助けに来てくれれば最高です。

 

「ウォフ」


 目の前に現れたのは大きな犬だった。

 芝犬のもっと大きな犬で、もしかしたらオオカミかも知れない。

 突然目の前に大きな犬が現れたので、僕は思わず固まってしまいました。


 ペロッ。


 大きな犬は僕のほっぺをペロリと舐めた。

 もしかして、僕たべられちゃうのかな。

 食べるのなら苦しまない様にして欲しいな。

 そんな事を考えていたら、大きな犬は籠の持ち手を咥えて持ち上げた。

 

「おや? どうしたのかな?」


 てっきり食べられると思ったのだが、大きな犬は籠を咥えたまま街道に出てズンズンと進んでいく。

 おおう、この大きな犬は走る速度が結構速いぞ。

 しかも籠を口に加えているので、籠が前後に揺れて結構しんどいぞ。

 ある意味この世界に生まれてきて、僕は一番のパニック状態になった。


「おーい、ヴォルフ。何しているんだ!」

「籠を咥えているわよ」


 すると、この大きな犬に声をかける男女の大人の声が聞こえてきた。

 この大きな犬の飼い主かな?

 うーん、まだパニック状態なので頭の中が整理出来ていなくて全く状況が掴めないぞ。


「籠って、またかよ」

「捨て子だね。ヴォルフ、良く見つけたね」

「ウォフ!」


 大人の女性が大きな犬が咥えていた籠を持って、僕の顔を興味深く眺めていた。

 緑色の長い髪をポニーテールにしていて、目の色も緑色の女性だ。

 おや?

 良く見ると、耳が普通の人よりも長めだ。

 男性の方も僕の顔をジロジロと覗き込んでいるけど、こっちは頭に犬みたいな耳がついているぞ。

 ちらちらと尻尾みたいな物も見える。

 一体どうなっているんだ?

 僕は、更にわけがわからなくなってしまった。


「この子は人族だね。この前も別の種族の捨て子がいたけど、一体どうなっているのか」

「まだ産まれたてだな。この前と同じくギルドに連れて行くか」

「ウォフ」


 どうやらこの辺りに、僕と同じく捨て子がいたらしい。

 そして、僕はとある所に連れて行かれるという。

 僕は一体どうなるのかな?

 大きな犬に食べられちゃうのかな?

 うーん、まだパニック状態で良く分からないぞ。


「この子、こんな状況なのによくしゃべるね」

「何だか面白いな」


 あ、そうか。

 喋っているつもりでいたけど、僕はまだ赤ちゃんだからあうあう言っているだけなんだ。

 他の人が聞いたら、何を言っているのか分からないよね。

 

 ペロッ。


 ぶっ。

 また、大きな犬が僕の顔をぺろりと舐めてきたぞ。

 うーん、流石に大きな犬が何を考えているか分からないなあ。

 というか、僕は赤ちゃんで小さいから大きな犬の顔はドアップしか見えないので、大きい犬の表情云々は分かりません。

 僕の視界には、大きな犬の鼻しか見えませんよ。

 と、大きな犬が口をあけてきた。


「ウォフ」


 おや?

 また籠が前後に揺れてきたぞ!

 この揺れはやめてくれ!

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