第三十五話 専属侍従
「失礼しました」
僕が会議室からでると、会議室の外で侍従が待っていた。
聞いた話だと、侍従は成人しているので十五歳は超えているはず。
そして侍従は人族が多い中、僕の担当になったのはウサギ獣人のお姉さん。
うーん、何だかスタイルが物凄く良いなあ。
だけど、僕はまだ子どもなので全く欲情はしませんよ。
「殿下、こちらになります」
「はい」
僕は、ウサギ獣人のお姉さんの後をついていきます。
執務スペースから、段々と居住スペースに移っていくんだけど、宮殿って本当に広いなあ。
僕一人だったら、こんな広い宮殿なんて絶対に迷っちゃうな。
「殿下、こちらになります。一番奥が陛下の部屋となり、次いでカーター殿下、スカーレット殿下、リリアン殿下の部屋となります」
「という事は、ここは王族のエリアなんですね」
「左様でございます。では、部屋をご案内します」
扉を開けて中を見るとびっくりです。
一部屋かなと思ったら、中には扉があって別の部屋もあるようだ。
そして、中には別の侍従も待っていた。
このお姉さんも人族ではなく、悪魔族やエルフ族もいるぞ。
「では、私達の紹介をいたします。私は殿下付きの侍従になりましたマーサと申します」
「私は、リリスと申します。スカーレット殿下とリリアン殿下のお世話もいたします」
「私はフルールと申します。私もスカーレット殿下とリリアン殿下のお世話も担当させて頂きます」
ウサギ獣人のお姉さんがマーサさんで、悪魔族のお姉さんがリリスさん。エルフ族のお姉さんがフルーフさん。
皆、成人したてなんだって。
「僕はクロノです。皆さん、よろしくお願いします」
「「「宜しくお願いします」」」
僕がペコっとお辞儀して、部屋の中の案内をしてもらいます。
「こちらの部屋は応接室になっております。奥は寝室になっております」
「わあ、ベッドが大きいですね」
応接室の奥の部屋は寝室で、ベッドがとても大きい。
お母さんの部屋のベッドも大きかったけど、倍くらいの大きさがあるな。
「反対の扉は浴室とトイレになっております」
「凄い、水洗トイレですね」
「魔導具を使用したトイレになっております」
前に歴史を勉強した時は中世の宮殿のトイレやお風呂って悲惨な状況だって聞いたけど、魔導具があるからなのか清潔なトイレだった。
お風呂も一人がキチンと入れる大きさだったよ。
僕が孤児院にいた時は体を拭く位しかできなかったから、物凄い発展だなあ。
「殿下は暫く男爵邸にお住まいになられますが、私も共に行く事になりました」
「そうなんですね。とても心強いです」
「スカーレット殿下とリリアン殿下も男爵邸に滞在されますので、私どももお供致します」
「男爵家の方にご迷惑のならない様に、しっかりとお仕えいたします」
確かに僕達だけでなく姉様達も男爵家にいるから、男爵邸にいる侍従の人も一苦労だよね。
ここはありがたく申し出を受けておこう。
と、ここで侍従の皆様が僕に申し訳なく話をしてきた。
「殿下には国民へのお披露目後に、王都民への炊き出しと治療を行なって頂きます」
「我々も炊き出しなどのお手伝い致しますが、どうしてもポーション作りは殿下にお願いする事になります」
「まだ幼年の殿下にお願いするのも心苦しいですが」
傍目にはまだ子どもの僕に苦労をかけるのが申し訳ない様だけど、逆に僕だからこそ協力できる部分だってあるんだ。
「いえいえ。僕は薬師でもありますから、皆の為になるなら頑張ってポーションを作りますよ。街の人には、少しでも早く元気になって貰いたいですから」
「「「殿下……」」」
薬師ギルドの件もあるし、出来るだけポーションは多く作った方が良さそうだ。
屋敷に帰ったら、アンナお姉ちゃんとドリーお姉ちゃんにも相談してみよう。