第三十話 反則的な可愛さ
「「「うー、ずっと探していたのに!」」」
「あはは、ごめんなさい」
僕とライラちゃんがお昼寝を終えて応接室に戻ってくると、不満顔の皆が待っていた。
スカーレット姉様とリリアン姉様は単純に僕を探していて、ララお姉ちゃんとリリお姉ちゃんとゴードンお兄ちゃんは、スカーレット姉様とリリアン姉様の魔の手から僕達の所に逃げようとしていた。
それでいて僕と同じく皆もお母さんの部屋が分からなかったので、ずっと応接室で僕の帰りを待っていたという。
流石に僕も皆に素直に謝っていた。
「まあまあ、クロノは朝早かったから疲れていたのよ」
お母さんも助太刀をしてくれたのでこの場は何とか収まり、皆でおやつタイムに。
その時に、スカーレット姉様とリリアン姉様がお母さんの事で何か気がついた様だ。
「あれ? お母さん随分と体調が良い?」
「何だかニコニコしているよ」
「ええ、クロノが軽度の麻痺を治してくれたの。おかげですっかり良くなったわ」
「そうなんだ」
「良かった」
軽度の麻痺が治ったから、お母さんの動きがスムーズになっている事に姉様が気がついた様だ。
因みに、お母さんは僕が魔法で治療したとは言わなかった。
人族は魔法が使えないので、僕が魔法を使えるというのはまだ秘密にしておこうとなったのだ。
なので、おばあちゃんも一緒にいた侍従も僕の魔法の事は内緒ってなっているよ。
そんな事を思っていたら、ゴードンお兄ちゃんがもじもじしながらお母さんに話しかけてきた。
「あ、あのね、お、お母さん。そっちに、行っても良い?」
「ええ、良いわ。こっちにいらっしゃい」
「うん、はふう」
「「「「うわー、か、可愛い!」」」」
うん、これは反則級に可愛い。
ゴードンお兄ちゃんがお母さんの隣に座って頭をなでなでされて、完全に蕩けている。
もうね、ゴードンお兄ちゃんの目がとろーんってなっているんだよ。
ゴードンお兄ちゃんには申し訳ないけど、とっても可愛いくまのぬいぐるみにしか見えないよ。
因みに孤児院のメンバーも、いつの間にか僕のお母さんの事をお母さんって呼んでいるんだ。
アンナお姉ちゃんだけは、兄様と同じく母上って呼んでいるよ。
兄様と姉様だけでなく孤児院のメンバーもお母さんって呼んでいるから、お母さんは沢山の子どもが一気にできたわってニコニコしていたよ。
おじいちゃんとおばあちゃんも、孫が沢山できたって喜んでいたんだ。
「ライラは抱っこ!」
「「「「あー、ずるい!」」」」
そしてライラちゃんは、早業でお母さんの膝の上をゲット。
まあ、ヒューって空を飛んできたから誰も止められない。
二組の双子がライラちゃんに文句を言っているけど、こればっかりは早いもの順だから仕方ないよね。
「あらあら、クロノちゃんが来てから、一気に賑やかになったわね」
こんな僕達の戯れあいの様子を、おばあちゃんもニコニコとしながら見ていたよ。